音盤紹介:トスカニーニによるチャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」をLPで聞く
今まで180cmラックの上の棚に置いていたLPプレーヤー、
部屋の模様替えで下におろしたら、
LPを聞く機会が増えました。
不安定な椅子の上に乗ってレコードをセット、
そろそろとカートリッジをおろしていたときに比べると、
雲泥の差です(^^;。
やはり、機材をどこに置くのかは重要ですね。
ただ残念なのは、
LPはほとんど処分してしまっていて、
「ああ、あれをCDではなくLPで聞きたいな」と思っても、
手元にない悲しさでしょうか。
残った数少ないLPの中に、
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮
NBC交響楽団の
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」があります。
100枚だったかの国内盤RCAトスカニーニ・エディションの中の1枚で、
1947年11月24日、カーネギーホールでの録音です。
トスカニーニのレコードは、
そのシリーズで結構持っていたのですが、
よく聞いた...という印象があまりありません。
そのころ、自分のシステムで再生していた音が好きではなかったのです。
高域にエネルギー感が固まり、
低域の薄い音で少しギスギスしており、
楽曲によってはトスカニーニの突進するようなテンポともども、
さすがせかせかした雷親父の音楽だな...と思っていました。
ごく最近、
MUSICAという日本の小さなアンプメーカーのフォノアンプを購入、
そのフォノアンプにはデフォルトで6つのイコライザーカーブがセットされています。
一般的なRIAAをはじめ、FFrr、Columbia、American78s、old AES、old NAB
です。
イコライザーカーブはRIAAに統一された後も、
レコード会社で異なっている場合があり、
一筋縄ではいきません。
それに、古い録音からのLP化は、
どのようなプロセスをたどってレコードになったのか、
よく分からない場合が多いようです。
今回取り上げるトスカニーニのLPは、
1960年以降の発売ですから、
基本的にはRIAAのはずです。
ところが、その音の印象があまりよくありません。
普通、LPのジャケットには《録音特性=RIAA》と書いてあるはずですが、
このレコードにはその記載がありませんでした。
RIAAではないのか?
そこで、MUSICAのフォノアンプをいろいろ切り替え、
音の違いを楽しみながら聞いてみました。
FFrr、Columbia、American78sではあまり楽しめませんでしたが、
old AES、old NABでは驚くほどの好結果が出ました。
NABでは少し中域に癖が出るようで、
AESが最も相応しいでしょうか。
本当ならパラメトリックイコライザー(フォノイコライザー)で細かく調整すれば、
もっと良い結果が生まれるはずですが、
残念ながらそこまで手が届きません。
MUSICAのAESでは少し高域が不足で、
さらにステレオカートリッジでの再生だからか、
けっこうサーフェスノイズ(針音)が低域に盛大です。
でもでも、
そうやって再生したトスカニーニの「悲愴」に、
大きく感動してしまいました。
高域に固まっていたエネルギーが低域に移ることによって、
音楽がゆったりとして聞こえ、
オーケストラバランスが見事にピラミッドに近くなりました。
これは聞きやすいし、
迫力も充分、
コントラバスやティンパニーがそれらしく響きます。
高域は少し不足気味ながら、
それでも大きな不満はありません。
トゥッティでのエネルギー感も凄いものがあります。
トスカニーニの「悲愴」が大変な名演の記録であったことも実感できます。
RCAのトスカニーニのレコードは、
このシリーズ以降も形を変えて発売されていました。
試しにもう少し新しいレコードも聞いてみましたが(ベートーヴェンです)、
これはRIAAで普通に聞けました。
ということはレコードの発売時期によって、
イコライザーカーブが異なるという、
ややこしいことになります。
さらにトスカニーニのCDでは、
どのマスターを使ってどんなプロセスでCD化されたか分からないので、
イコライザー別建てで調整する必要があるということになるのでしょうか?
これはちと、荷が重いですね。
でも、
20世紀最大の指揮者、
トスカニーニのLPを再生するときの注意点が分かったような気がして、
またぞろトスカニーニのLPを中古で探そうか...
などと思ってしまっていますので、病の根は深いですね(^^;。
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