音盤紹介:カラヤンによるマーラー/交響曲第5番
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音楽のこと
先日、マーラーの誕生日だということで(7月7日)、
交響曲第5番を筆頭に、
同曲をあれこれ引っ張り出して聞いてみました。
今回取り上げるのはカラヤン盤ですが、
カラヤンの命日も7月16日だったのですね。
忘れていました。
マーラー/交響曲第5番の店長のマイ・フェヴァリッツは、
テンシュテットとロンドン・フィルによる、
1988年12月13日ライヴ録音です。
元はEMIですが、今はWARNERです。
マーラー/交響曲第5番は、
古くはヴァーツラフ・ノイマン盤
レナード・バーンスタインの旧交響曲全集盤
ジョン・バルビローリ盤
などで育ってきました。
他にクーべリック盤もあったはずですが、
クーべリック盤を聞いたのはかなり後です。
刷り込み盤はバルビローリ盤でした。
ただ、どの演奏録音も演奏に傷があり、
「これぞ完璧」といえる演奏録音はありませんでした。
そこに登場したのが、
マーラーの演奏録音がそれまでなかった、
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルの、
1973年録音のDG盤です。
カラヤンでは、
先に「大地の歌」のライヴがNHK-FMで流れましたので、
「へぇ、カラヤンもマーラーを振るんだ」と思っていたら、
まず第5番がLPでリリースされたのでした。
これには驚愕しました。
目立つ演奏の傷がないのです(ところどころありますが^^;)。
それに、録音された音が過大なエコーのお陰もありますが、
華麗でゴージャス、
正にカラヤンの面目躍如たる演奏録音でした。
ただ、LPはエコー成分が少し変で、
国内盤しか持っていませんでしたが、
中央に長めのエコーがフワフワと漂うような音で、
それだけが不満でした。
CDを聞いてもエコーが過大です。
ガラーンとしたホールの遠いところにマイクを立てて録ったような、
一つ間違えば風呂屋の録音のような音なので、
調べてみたらベルリン・フィルハーモニーザールではなく、
ベルリン・イエス・キリスト教会での録音でした。
エンジニアがそこを選んだからか、
カラヤンが選んだからかは分かりません。
その後、1年や2年後位から(正確には覚えていません^^;)、
アバドやレヴァインやテンシュテットが次々とマーラー交響曲全集を録音、
「第2次マーラーブーム」と呼ばれるほどでした。
店長は長年マーラーを聞き続けてきましたが、
最初に書いた通り、
第5番のマイ・フェヴァリッツはテンシュテットのライヴ録音です。
あと、ダニエレ・ガッティの挑戦的な録音が印象に残っています。
でも、久しぶりに聞いたカラヤン盤に、
カラヤンの同曲に対する入れ込み具合が尋常ではなかったんだな...
と聞いていて気が付くようになり、
そのフレージングやアゴーギグに、
今聞くと大時代的ながらも、
カラヤンの同曲に対する愛情というか、
「ここまでやるか?」
という嬉しい発見がかなりありました。
確かに第3楽章などで少し混乱している箇所もありますが、
全体的には、やはりすごい演奏録音です。
聞き手も年を取りますから。
カラヤンでは、
最近、クリスチャン・フェラスとの、
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲を聞き、
その啓蒙的で人工的な演出臭さに閉口してしまったのですが、
「カラヤンの演奏録音には2種類ある。
義務的に録音した、
鼻持ちならない人工的な演出臭さのある演奏録音と、
逆に共感に満ちた極限的ともいえる演奏録音だ」
ということを改めて思い出しました。
アンチカラヤン派はたまたま前者を聞き、
すべての演奏録音がそうだろうと思い込み、
カラヤン賛美派はたまたま後者を聞き、
すべての演奏録音が「まる」なのだろうと思います。
カラヤンほど重責を負い、
才能に満ちた指揮者は他には見当たりませんので、
その膨大な演奏録音は一筋縄ではゆきません。
簡単に片づけられる演奏録音群ではないのです。
ひとつひとつ自分で聞いて、
判断するしかありません。
でも、アンチカラヤンという言葉も、
死語に近くなってしまったのかな?
と、2017年の今は死後28年経ちますので、
感慨を覚えてしまうのでした。
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