*

音盤紹介:テンシュテットによるワーグナー/「ワルキューレ」第1幕

公開日: : 音楽のこと

tennstedt_varkure

ワーグナー「ニーベルンクの指環」は4部作のオペラで、
休憩日を挟み、4日かけて上演されます。
最初(序夜、前夜祭)の「ラインの黄金」はそれほど長くありませんが、
続く、
「ワルキューレ」
「ジークフリート」
「神々の黄昏」
は、それぞれがかなり長いオペラです。
どれも人気のあるオペラで、
単独で上演されることもありますが(最近は少なくなったようです)、
中でも「ワルキューレ」の人気が高いですね。
楽劇全体の主人公ジークフリートはまだ生まれていませんが、
もう一方の女主人公ブリュンヒルデの活躍と没落が描かれます。

「ワルキューレ」は、
有名な「ワルキューレの騎行」が管弦楽曲でとくに有名で、
「ワルキューレ」全曲なんて聞いたことはなくても、
「ワルキューレの騎行」ならだれでも知っている、
という超有名曲です。
でも、「ワルキューレの騎行」がオペラのどこで、
どういう風に使われているのか、
オペラ全曲を聞くとやはり面白いです。

「ワルキューレ」は、
全曲だけではなく、
第1幕のみ、コンサート形式でもよく取り上げられます。
第1幕は楽曲としても劇的ですし、
登場人物はコーラスなどは必要なく3人だけですので、
物理的に演奏しやすい...という面が大きいからだと言えます。

「ワルキューレ」第1幕のレコードといえば、
わがハンス・クナッパーツブッシュに1957年にステレオで録音された、
キルステン・フラグスタート、
セット・スヴァンホルム、
アルノルト・ヴァン・ミル
そしてウィーン・フィルとの歴史的名盤があります。
さらにクナッパーツブッシュには、
1963年ウィーン芸術週間での、
クレア・ワトソン、
フリッツ・ウール、
ヨーゼフ・グラインドル
そしてウィーン・フィルとの映像も残されています。

さらに、
オットー・クレンペラーにも、
「ワルキューレ」第1幕のセッション録音が残されており、
クナッパーツブッシュとはまた別の興趣の、
オペラたたき上げ指揮者による演奏録音を聞くことができます。

そして、
新たにロンドン・フィルの独自レーベルから、
クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルの、
1991年ライヴ録音がリリースされました。
拙宅に届いて何回か聞きましたが、
冒頭の前奏曲から凄い演奏になっています。
歌手は、
エーファ=マリア・ブントシュー、
ルネ・コロ、
ジョン・トムリソソン
という顔ぶれで、安定した歌唱を聞くことができます。
ルネ・コロのジークムントをしっかり聞けるなんてすばらしいですね。
ジークリンデのブントシュー、フンディングのトムリンソンも素晴らしいです。
そして、何より雄弁で迫力のある管弦楽!
迫力がありながらも、非常に緻密な音楽を聞くことができます。
テンシュテットのテンポは部分的には少しゆったり気味に、
管弦楽の持つ意味を抉り出してゆきます。
前奏曲から、ただならぬ空気が漂う演奏で、
最後まで陶酔しながら聞くことができます。
「ワルキューレ」第1幕の、
破格の名盤の誕生といってもいいと思います。

このロンドン・フィル・レーベルの演奏録音は、
1991年10月7日と10日から編集されていますが、
今までコレクターズ・アイテムとして、
10日の膝録り録音(いけない録音ですね)が海賊盤で出たことがあります。
でも、会場のかなり遠いところで録ったのか、
歌手の声が貧弱で、
コンサートの迫力は十全には伝わってきませんでした。
今度のロンドン・フィル・レーベルのリリースは大歓迎です。
最後の熱狂的な聴衆の拍手に、
どんな演奏であったのか、その意味を如実に分からせてくれます。

テンシュテットのコレクターズ・アイテムとして、
「ワルキューレ」第1幕は、
同じロンドン・フィルでの1981年ライヴ録音も海賊盤で出たことがあります。
その時の歌手は、
ジェシー・ノーマン、
ロバート・シュンク、
マリウス・リンツラーでした。
1991年に比べて、
1981年当時のテンシュテットの特徴であった、
音楽を追い込むような迫力満点の演奏録音ですが、
やはり音があまりよくなく(というよりかなり悪いです)、
「あれもリリースしてくれないかな~」などと、
ないものねだり的に思ってしまうのでした。

関連記事

音盤紹介:安田里沙さんによる「Lisztへのオマージュ」

LP時代から、 演奏者や楽器製造会社(多くはピアノですね)などから、 自主制作盤が数多く

記事を読む

音盤紹介:アルバン・ゲルハルトによるプフィッツナー/チェロ協奏曲集

ハンス・プフィッツナーは、 第1次大戦と第2次大戦を経験した、 日本ではあまりよく知られ

記事を読む

音盤紹介:岩城宏之による黛敏郎「舞楽」

寒さと温かさが交互にやってきて、 なかな着る服に困りますが、 もう1ヶ月もすると、 「

記事を読む

音盤紹介:シューリヒトによるモーツァルト/交響曲第41番「ジュピター」

モーツァルトの最後の交響曲となった第41番は、 楽曲の壮大さ、輝かしい音楽に、 「ジュピ

記事を読む

音盤紹介:ケルテスによるドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は、 その昔、交響曲第5番でした。 店長がクラ

記事を読む

音盤紹介:クナッパーツブッシュによるチャイコフスキー/「くるみ割り人形」

店長はハンス・クナッパーツブッシュが大好きで、 入手できるだけの演奏録音はたいがい揃えたと

記事を読む

音盤紹介:イザイの弦楽器のための協奏的作品集

ウジェーヌ・イザイといえば、 6曲の無伴奏ヴァイオリン・ソナタが有名で、 おそらくそれし

記事を読む

音盤紹介:クライバーによるベートーヴェン/交響曲第4番

ベートーヴェン/交響曲第4番は、 第3番「エロイカ」と第5番の間に挟まれ、 表題もなく、

記事を読む

音盤紹介:クナッパーツブッシュによる1960年「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

1月も半ばになってしまいましたが、 皆さん、年初に聞く音楽には、 どのようなものを選択さ

記事を読む

音盤紹介:マリンバによるラヴェル

昼間の気温はガクンと下がるということはありませんが、 朝夕は涼しくなり始めました。 ここ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ARGENTUM 520 試聴記 その2

デビュー当時の一時期、 飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがあっても、

ARGENTUM 520 試聴記 その1

ARGENTUM 520が我が家に届いて、 早速、普段いろいろモ

QUADRAL ARGENTUMシリーズ販売開始...ただし、楽天とYahoo!です

あらいぐま堂を中心に販売する、 QUADRALの新しいスピーカー、A

ヤフオクでHAMILEXのTVボードを販売中です

あらいぐま堂では楽天、Yahoo!ショッピングストア、amazon

また、新しいフォノイコライザーを買ってしまった

MUSICA RAICHO3 PHONO、合研LAB GK06SP

→もっと見る

PAGE TOP ↑