音盤紹介:テンシュットによるマーラー/交響曲第1番1990ライヴ
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音楽のこと
一時、「マーラー・ブーム」といわれるほど、
マーラーの交響曲の録音が増えたことがありました。
我が、クラウス・テンシュテットのセッション録音での全集も、
その「ブーム」の最中に録音されました。
1975年頃から1979年頃にかけてです。
そのテンシュテットには、
セッション録音のほかにライヴ録音も数多くリリースされ、
セッション録音とはまた違うテンシュテットの没入した演奏に、
今でも根強いファンがたくさんいます。
交響曲第1番「巨人」も、
全部で、さて、いくつの録音が確認されているのだろう?
と思うと7種類でした。
ボストン交響楽団、
NDRハンブルク北ドイツ放送交響楽団、
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、
フィラデルフィア管弦楽団
等との演奏録音が残っていますが、
一番印象深いのが、1990年5月と6月のライヴから編集された、
EMIからリリースされたシカゴ交響楽団との演奏録音でした。
テンシュテットのマーラー/交響曲第1番では、
1977年11月14日の、
NDRハンブルク北ドイツ放送交響楽団とのライヴ録音が最も凄まじいですが、
1990年のシカゴ交響楽団とのライヴ録音は、
さらに楽曲をテンシュテットの側に引き寄せ、
スーパーオーケストラの威力も充分、
マーラー/交響曲第1番って、こんなに深い楽曲だったんだ!
といろいろな再発見をさせてくれます。
テンシュテットは1985年に喉頭がんを発病、
1998年に亡くなりますが、
最後の録音は1993年マーラー/交響曲第7番ですので、
1990年はテンシュテットの活動期間では
かなり後の録音ということになります。
テンシュテットの、
マーラーでの楽曲への没入度は凄まじいものでした。
その没入をオーケストラにも求めたため、
NDRやウィーン・フィル、ベルリン・フィルからは嫌われ、
ロンドン・フィルに受け入れられましたが、
指揮者としては異色で、しかも破格の存在でした。
度々共演したフィラデルフィア管弦楽団や、
シカゴ交響楽団にも、凄い演奏録音が残されています。
1990年シカゴ交響楽団とのマーラー/交響曲第1番は、
テンシュテットの他の交響曲第1番の演奏録音とは異なり、
テンポがゆっくりしており、
箇所によっては楽曲を慈しんで演奏しているようなところがあります。
ただし、美しいだけの演奏ではなく、
楽曲の性格を残酷なまでにえぐりこんでゆくような箇所もありますので、
好悪は分かれるかもしれません。
テンシュテットが亡くなって、
もうすぐ18年になろうとしています。
亡くなったら忘れてしまわれる指揮者が多い中で、
テンシュテットはまだまだわたしたちの中に生き続ける、
稀有の例といっても過言ではないと思います。
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