音盤紹介:サラステによるシルヴェストロフ/交響曲第5番
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音楽のこと
クラシック音楽から発展した「現代音楽」というと、
頭から敬遠する人がたくさんいます。
訳の分からない音を聞かされている、
作曲家の自己満足ではないか?
と考えている人も多いようです。
それに、現代音楽は極めて多岐に渡っていて、
ひとことで、「これが現代音楽」と明示できるものはありません。
現代音楽という言葉自体、
「同時代音楽」にすべきだ、という意見もあり、
いまだに呼称自体が統一されていないということもあります。
店長は、中学生の頃の聞き始めが現代音楽でしたから
(黛敏郎「涅槃交響曲」でした)、
早くから現代音楽への免疫が出来ていました。
現代音楽…といっても、日本の同時代音楽が中心でした。
テレビドラマや映画の主題曲を作曲した作曲家に関心があったのですね。
1970年大阪万国博は、
現代音楽の見本市のようなところがありましたが、
高校生の店長は、
万博で来日したシュトックハウゼンやクセナキスを万博で知りました。
加えて、映画「2001年:宇宙の旅」で知ったジョルジ・リゲティ、
たまたま「ルカ受難曲」のレコードを買ったクリシシトフ・ペンデレツキ、
小澤征爾が指揮をしたレコードで知った
「トゥーランガリラ交響曲」のオリヴィエ・メシアン、
日本の三善晃、武満徹、松村禎三、湯浅譲二は、
店長のヒーローでした。おませですね。
その後、アメリカの同時代音楽、
ジョン・ケージ、モートン・フェルドマンをはじめ、
テリー・ライリーやラ・モンテ・ヤングを知り、
スティーヴ・ライヒのミニマルミュージックが始まった頃で、
どれも刺激的で、大好きでした。
オーストリアの
新ウィーン楽派、
アーノルト・シェーンベルク、
アルバン・ベルク、
アントン・ウェーベルンは、
その後から聞き始めました。
どちらかというと、ヨーロッパ現代音楽の流れとは、
少し違うところから始めて現代音楽を聞いてきたようです。
その後、クラシック音楽に偏って聞くようになりましたが、
今でも、現代音楽=同時代音楽には、関心を持ち続けています。
そんな中で、今一番よく聞いている作曲家は、
ウクライナの作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフの作品です。
シルヴェストロフは最初前衛的な作風で、
当時のソヴィエトでは忌諱されたようですが、
奥さんが亡くなってから作風ががらりと変わり、
どこかノスタルジックで、
慰撫されるような音楽を数多く作っています
(さらに最近の新しい作品は、厳しさが増していますが)。
ニューエイジ・ミュージックの変化形といっても過言ではないほどです。
シルヴェストロフは現在まで交響曲では第7番まで作曲していますが、
最も評判が高いのは第5番で、
最初こそ物々しいですが、後は1楽章形式で、
マーラー/交響曲第3番第6楽章を交響曲第10番「アダージョ」で色漬けし、
さらにノスタルジックに、慰撫するような音楽が延々と続きます。
マーラー/交響曲第3番第6楽章のような、
最後で大きく盛り上がって神の偉容に同化するような響きはありません。
それでも、聞き手によってはかけがえのない何ものかをもたらしてくれます。
BISというレーベルは元々高音質で定評がありますが、
サラステ指揮ラハティ交響楽団のシルヴェストロフの録音も素晴らしく、
店長の現在での宝物的CDです。
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