音盤紹介:カラヤンによるワーグナー/「タンホイザー」序曲とヴェヌスベルクの音楽
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最終更新日:2014/09/13
音楽のこと
ワーグナーの「さまよえるオランダ人」以降のオペラは、
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、「パルジファル」を除くと、
たいがい悲劇です。
「パルジファル」も喜劇ではありませんので、
喜劇的な要素を持ったオペラは「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のみ、
ということがいえるかもしれません。
「タンホイザー」も悲劇です。
魔界の女性の誘惑に結局は負けてしまうタンホイザーの悲劇が描かれます。
最後は救済はあるものの、
残念ながら主役のタンホイザーとエリーザベトは死んだ後でした。
オペラ全曲としては、
ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮の、
1962年バイロイト祝祭歌劇場のライヴ録音や、
ゲオルグ・ショルティの録音を聞いていますが、
これは決定的にいいと思える演奏録音がないからです。
サヴァリッシュ盤は主役を歌うウォルフガング・ウィントガッセンが走り気味で
(店長はウィントガッセンが大好きなのですが)、
少し興を殺がれる部分があり、
ショルティ盤は単調であまり好きになれません。
その他、コンヴィチュニー盤やハイティンク盤も聞きましたが、
「タンホイザー」は難しいのか、
今まで「これだ!」、と思った演奏録音にはめぐり合えていません。
そこで、今回は全曲盤ではなく、
序曲とヴェヌスベルクの音楽の紹介です。
第3幕に「夕星の歌」という有名な旋律がありますが、
またの機会に…。
「タンホイザー」には初演されたドレスデン版とパリ版スコアがあり、
通常は演奏時間の問題からかドレスデン版が主ですが、
パリ版には序曲に含まれるヴェヌスベルクの音楽だけではなく、
危険な快楽、酒池肉林のヴェヌスベルクのバレエ音楽が序曲にくっついています。
一般的なドレスデン版では、
この悲劇の序曲の演奏として、
今まで聞いた中で最も相応しいのは、
ハンス・クナッパーツブッシュがウィーン・フィルと、
1940年5月12日に録音した、
当時のドイツ帝国放送局用の録音です。
当時、第2次世界大戦の初期で、
ドイツ軍は連戦連勝でしたが、
クナッパーツブッシュの演奏は恐ろしく暗鬱で、
「タンホイザー」という悲劇の序曲として、
これはひじょうな聞きものです。
ただ、クナッパーツブッシュの1940年の録音は途中で大きな欠落があり、
序曲に含まれるヴェヌスベルクの場面の音楽がほとんど欠けているため、
一般には薦めにくいです。
パリ版の優れた演奏録音としては、
アルトゥーロ・トスカニーニの1952年の録音や、
ハンス・クナッパーツブッシュの1953年の録音がありますが、
今回はヘルベルト・フォン・カラヤンの1974年、
ベルリン・フィルとのEMIセッション録音の紹介です。
カラヤンは、
どちらかというとオペラを深刻に表現するというより、
その美しさを際立たせたり、
絢爛豪華な響きの渦を現出させることの上手い指揮者で、
イタリア・オペラが得意だったことからも分かるように、
ワーグナーの深刻な哲学的ともいえる悲劇を
深く掘り下げたという印象はあまりありません。
それでもカラヤンは元々オペラ指揮者ですので、
店長はその磨き抜かれたセッション録音やライヴ録音は、
聞く価値がひじょうに高い思っています。
カラヤンによるEMIへのワーグナー/管弦楽曲集は凄いです。
管弦楽曲が含まれている、
元になるオペラへの含蓄はあまり感じませんが、
ベルリン・フィルというスーパー・オーケストラの絢爛たる響き、
そしてワーグナーの危険なほど陶酔するような厚みのある響きを、
ここまで演奏しきった例はあまりないのではないか、と思えるほどです。
「タンホイザー」序曲とヴェヌスベルクの音楽も、
タンホイザーとエリーザベトの悲劇というより、
ヴェヌスの危険な快楽に重心を置いた演奏で、
そこにはワーグナーの深遠な哲学的、思索的な雰囲気はほんの少ししかなく、
あとはカラヤンの紡ぎだす陶酔するような音楽と、
精妙なピアニシモから美しく爆発するベルリン・フィルの圧力に圧倒されます。
まあ、「タンホイザー」序曲とヴェヌスベルクの音楽は
そういう音楽ではあるのですが。
カラヤン盤を初めて聞いたのはレコードでしたが、
「これはやばい!」と思うほど圧倒されました。
「タンホイザー」というオペラを理解するためには、
適している…とはいいにくいですが、
絶頂期のカラヤンとベルリン・フィルによる目くるめく演奏が聞ける、
ということでは、これは素晴らしい成果です。
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