音盤紹介:リヒターによるバッハ/管弦楽組曲全集
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音楽のこと
J.S.バッハほど、
その演奏方法が変質した例は珍しいと思います。
店長がバッハを聞き始めた頃は、
ちょうどカール・リヒターやカール・ミュンヒンガー、
ジャン=フランソワ・パイヤールなどの全盛期で、
パブロ・カザルスの
マールボロ祝祭音楽祭でのライヴが話題になった頃でもあります。
バッハ演奏の夜明け、みたいに言われた時期です。
その少し後だったでしょうか、
マックス・ポマーやコレギウム・アウレウム合奏団などによる、
古楽器奏法との折衷的な演奏が盛んに行われるようになり、
その後、グスタフ・レオンハルトやニコラウス・アーノンク-ルをはじめ、
イギリスのトレヴァー・ピノックやクリストファー・ホグウッド、
アメリカで活躍しているアンドルー・パレット、
オランダのトン・コープマンなど、
枚挙の暇がないほど、
文字通り古楽器による演奏が主流になりました。
ただ、リヒター以前の古色蒼然とした演奏から、
リヒターなどの当時斬新であった録音を経た身としては、
現代の古楽器演奏はどこか軽やかなイタリア・バロックを聞いているようで、
少し物足りなく思っているのも確かです。
リヒターによるバッハ/管弦楽組曲はまだレコード時代、
レコード屋さんで聞かせてもらった
マトリックス4チャンネルでの再生が衝撃的で、
その包み込むような音と素晴らしい演奏に、
店長は、40年以上前に体験したその衝撃を、
今だに忘れられないでいます。
マトリックス4チャンネルは、
通常ステレオの2チャンネル録音の逆相成分を取り出し、
音を立体的に聞かせる方法です。
(やり方はかんたんですので、ご要望があればお教えします)
リヒターの演奏録音は、
今となってはかなり遅いテンポで、
各組曲の中心となる序曲など、
重い…といってもいいほどです。
軽やかな楽しさよりも、
もっと哲学的で、正座をしながら聞かなければならないような、
厳しさを持った演奏録音です。
ほんとのこというと、
店長はバロック音楽全体では最近の古楽器による演奏の方が好きです。
何気なく聞いていられますし、
何よりその響きの瑞々しさは魅力的です。
でも、カール・リヒターの演奏録音を聞くと、
バッハの深遠な世界を体現しているようで、
やはり素晴らしいな、と感じてしまいます。
例えばリヒターとパロットの管弦楽組曲を両方聞き比べる、
なんてことも、音楽ファンにはお勧めです。
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