モーツァルトの最後の交響曲となった第41番は、
楽曲の壮大さ、輝かしい音楽に、
「ジュピター」と名づけられました。
「ジュピター」と名づけられた経緯は分からないそうですが、
かなり古くから「ジュピター」という名前は通っていたようです。
当時、稀に見るスケールの大きな音楽だったようです。
店長が「ジュピター」を初めて聞いたのは、
当時廉価盤で出ていた
ヨーゼフ・クリップスのレコードだったように記憶していますが、
自信がありません。
他の指揮者による演奏だったかもしれません。
意識して「ジュピター」のレコードを購入したのは、
ニコラウス・アーノンクール指揮
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏録音でした。
これは、近代型オーケストラで、
古楽器による演奏法を実践した、
ひじょうに意欲的なレコードでした。
さらに、通常省略される繰り返しを省略せずに演奏した、
当時としては画期的な演奏録音でした。
アーノンクールの指揮も刺激的で、
店長のレコード棚には、いまだにこのアーノンクール盤が残っています。
ただ、「ジュピター」のお気に入りというと大変難しく、
自分にとって好きな演奏録音を発見して聞けるまで、
あれこれ漁盤して、かなり時間がかかりました。
現在、店長が「ジュピター」といってまず頭に思い浮かぶのは、
クラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団のライヴ録音、
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団のセッション録音、
そして、今回取り上げる
カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の、
1960年ザルツブルク音楽祭のライヴ録音です。
シューリヒト盤を初めて聞いたのはすでにCD時代で、
モノラルながら、その演奏に驚愕しました。
恐ろしくテンポが速く、しかも音楽が生命をもって蠢いているようなのです。
亡くなった日本の指揮者、岩城宏之氏の書かれたものに、
シューリヒトの「ジュピター」のことが取り上げられていて、
シューリヒトが振り間違えてとんでもなく速いテンポになった…
という文章があったことを記憶しています。
もしかしたら、この1960年の演奏会場に岩城氏がいたのかもしれません。
でも、店長にはその速いテンポは、確信犯的なシューリヒトの指揮のようにも聞こえます。
シューリヒトそのひとは貴族的だったそうで、
店長の好きなハンス・クナッパーツブッシュの下品な言動を嫌っていたようですが、
(でも、クナッパーツブッシュは頭の先からつま先まで、
本物の紳士だったそうです)
シューリヒトもクナッパーツブッシュも、
一期一会の演奏会での即興を大切にする指揮者でもありました。
シューリヒトの勢いのある速いテンポで演奏するウィーン・フィルの実力もものすごく、
全編に生命感があふれた稀有の演奏記録だと思います。
ただ単にテンポが速いだけの、忙しい演奏ではありません。
今、このCDが入手できるのかどうか、
大変難しいようです。
中古でもし見つけたら、
「モノラルは聞かない」人は別にして、是非盤でお勧めいたします。
凄い演奏録音です。