ハンス・プフィッツナーは、
第1次大戦と第2次大戦を経験した、
日本ではあまりよく知られているとは言えないドイツの作曲家兼指揮者です。
かなり極端な反ユダヤ主義の人種主義者で、
理論家でもありました。
生前、ナチの党機関紙
「フェルキッシャー・ベオバハター」にも寄稿していましたので、
ナチシンパの作曲家として、
戦後ドイツでは忘れてしまいたい音楽家のひとりでした。
ところが面白いのは、
人種主義者のわりに、
ミュンヘンの新聞の主宰者がユダヤ人であったにも関わらず大きな庇護を受け、
ユダヤ人指揮者ブルーノ・ワルターとは非常に仲良しでした。
逆に、
ヒトラーとは同じ国粋主義者ということでミュンヘン一揆前に会っていますが、
痩せて大きな鼻をしたプフィッツナーは、
ヒトラーからユダヤ人ラビと誤解され、
後にゲーリングとは年金問題で衝突、
老後の途中で年金を剥奪されたりしています。
プフィッツナーは、
同時代の作曲家兼指揮者リヒャルト・シュトラウスをライヴァル視していました。
ふたりの若いころ、
ふたりの作曲家の作品が同じ舞台で演奏される機会があったのですが、
リヒャルト・シュトラウスの作品の方が受けが良かった...
ということがそもそもの発端のようです。
その後、リヒャルト・シュトラウスのオペラは、
「サロメ」や「エレクトラ」など、
物議をかもしながらも次々とヒット、
プフィッツナーのオペラも待たれてはいたのですが、
「パレストリーナ」以外、
それほど大きな評価を得ることはできませんでした。
指揮者としてのプフィッツナーが
シュトラスブルク(ストラスブ-ル)歌劇場の音楽監督をしていた時代、
フルトヴェングラーがその助手で、
プフィッツナーを訪ねたワルターがフルトヴェングラーの才能に着目、
他の歌劇場を紹介したりしました。
その後、ワルターのバイエルン国立歌劇場離任の時には、
ワルターとフルトヴェングラーは、
ベルリン・フィルの音楽監督の地位をめぐってライヴァルとなるのですが、
この時代の指揮者とプフィッツナーは、
何らかのつながりがあるということは面白いですね。
かなり狷介な性格で、
頑固おやじであったようですが、
その作品は後期ロマン派の作曲家の中でも、
驚くほど純粋にロマンティックな作品が多いです。
店長はハンス・クナッパーツブッシュが好きで、
調べものをするとプフィッツナーの名前が必ず出てきて、
さて、どんな作品を作曲したひとなんだろう?
と、関心を持つのですが、
いかんせん演奏録音が少なく、
なかなかその作品を聞けないでいました。
プフィッツナーの作品は、
細々と録音されていた観があるのを一気にひっくり返したのが、
ドイツのcpoというマイナーレーベルです(今は大きなレーベルになっています)。
管弦楽作品や協奏曲などを一気にリリース、
プフィッツナーを聞いてみたい...
という渇望が癒されたようなところがあります。
その後、プフィッツナーの作品は、
かなり聞くことができるようになりました。
今回取り上げるのは、
長年発見されなかった作品を含むチェロ協奏曲集です。
イギリスのHyperionというレーベルの、
最近録音されたロマンティック・チェロ協奏曲シリーズの1枚ですが、
作品もですが、
演奏も非常に素晴らしく、
プフィッツナーの純粋ともいえるロマンティックな楽曲を聞くことができます。
現代のデジタル録音としては水準ですが、
プフィッツナーのロマンティックな作品が聞ける、
ということでは大推薦のCDです。