もう、10年以上前の話になってしまいましたが、
クラシックの廉価盤レーベルNAXOSから、
ゲオルグ・ティントナーのブルックナーが次々とリリースされました。
各交響曲が発売されるたび、
店長は楽しみに買っていたのですが、
ある時、CDを大量に処分しなければならなくなり、
ティントナーのブルックナーをあれこれ聞いて(全部揃っていました)、
交響曲によってオーケストラが非力で、
ヘロヘロ気味になっている演奏録音や、
ティントナーのじっくりとしたテンポの遅さに、
「これはもういいかなぁ...」と処分してしまったのでした。
その後、長い間ティントナーのブルックナーは忘れていたのですが、
大阪の中古CD屋のお買い得ワゴンの中に、
第4番「ロマンティック」が格安で投げ込まれており、
そのジャケットの懐かしさに、
思わず買ってしまったのでした。
随分久しぶりに聴いてみたら、
第4番のオーケストラは、
グラスゴーのロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団で、
合奏制度が高く、
10年前に比べて自分の耳が変わったからか、
ティントナーの遅めのテンポが、
しみじみとした興趣でしみ込んでくるのでした。
じわっと涙があふれてしまうような...。
こうなると、ティントナーの他のブルックナーが聞きたくなってしまいます。
結局、ボックスで出ているブルックナー交響曲全集を買ってしまったのでした。
レベルダウンの買い直しですね。
なんともはや。
ティントナーはNAXOSのブルックナーが出るまで、
全く知られていない指揮者でした。
1917年オーストリア生まれで、
ウィーン少年合唱団に在籍していたこともありますが、
ユダヤ人であったことから、
ヒトラーが政権を奪取、
オーストリア侵攻に伴い、
国外脱出を余儀なくされたのでした。
その後、ニュージーランド、オーストラリアを経て、
南アフリカでも指揮活動をしていましたが、
オーストラリアに戻り、
その後、カナダに活動拠点を移しました。
日本ではあまり注目されていない地域での活動、
レコード録音もありませんでしたので、
日本のクラシックファンはその存在を知らなかったのは、
無理からぬところです。
ティントナーは来日予定があったにも関わらず、
癌を苦に82歳で自殺、
その生涯を閉じてしまいました。
聞き手も年齢を重ねると、
ダイナミックなブルックナーよりも、
しみじみとしたブルックナーの方により共感を覚えるようです。
交響曲によってはオーケストラがヘロヘロで、
その遅いテンポともども、
「これは聞くのがつらい」という録音があるのは事実ですが、
大事に聴いてゆきたい全集であるのは確かです。
中古CD屋のワゴンに投げ込まれていた、
格安CDがティントナーの再発見をさせくれたのでした。