グスターヴ・ホルストの「惑星」は、
店長がクラシックを聴き始めた当時、
まだ一般的な楽曲ではありませんでした。
ホルストの作品自体、
「惑星」以外あまり知られていませんでしたので(今でも^^;)、
「惑星」を初めて聞いた当時、
それほどの大傑作という認識はありませんでした。
レコードも、
確かレコード屋さんで入手できたのは、
DECCAのカラヤン盤(日本では当時LONDON)くらいだったように記憶しています。
レオポルド・ストコフスキー盤や、
ウィリアム・スタインバーグ盤もあったような記憶があるのですが、
自分が最初に買った「惑星」がカラヤン盤でしたので、
レコード屋さんでどのレコードを見たことがあるのか、
記憶はかなりあいまいです。
カラヤンの「惑星」はウィーン・フィルとの1961年録音です。
当時、この録音は音が大変よく、
演奏もオーケストラをぐいぐい引っ張ってゆくような力強い演奏で、
EMIやドイツ・グラモフォンから出ている、
他の楽曲でのカラヤンのイメージと、
かなり異なるところがありました。
「惑星」が一般的になったのは、
スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年:宇宙の旅」の
宇宙ブーム(映画では「惑星」からの楽曲は使用されていません)で、
もう少し後に、
イギリスのサー・エードリアン・ボールト指揮のEMI盤がベストセラーになるなど
(ボールト5回目の「惑星」録音であったそうです)、
その他の指揮者による録音も驚くほど増え、
「惑星」の録音がジワジワ一般化したという印象があります。
さらに、「スターウォーズ」や「未知との遭遇」なんて映画も、
宇宙を題材にした映画のヒットのお陰で、
「惑星」があれこれ登場することになったとも言えそうです。
あ、そうそう、冨田勲のシンセサイザー版「惑星」もヒットを飛ばしましたっけ。
さらに後年、平原綾香の「ジュピター」なんてのもありましたし。
ただ、面白いのは、
「惑星」は天文学的な思いを楽曲にしたわけではなく、
占星術や、
イギリスを中心とした「惑星」のような国々を現した楽曲だ、
てな蘊蓄でしょうか。
自分でも、今までどれだけの「惑星」を
聞いてきたのか分からなくなっていますが、
「惑星」の録音といって、
最も印象に残っているのは、
このカラヤンの1961年の録音とボールトの5回目の録音です。
カラヤンはデジタル時代になって、
ベルリン・フィルとドイツ・グラモフォンにも「惑星」を残していますが、
ウィーン・フィルとの荒々しいまでの演奏録音が、
今聞き直しても、凄い演奏だなぁ...と感心してしまいます。
ホルストの「惑星」は、
現代音楽とは言えないまでも1916年に完成していますから、
20世紀の作品です。
フランスでいえばラヴェルの時代ですね。
1961年当時、「惑星」の音楽界におけるイギリスのローカル音楽という位置、
カラヤンには20世紀の作品の録音や、
イギリスの作曲家の作品の録音が少ないことを考えると、
カラヤンの楽曲に対する理解度が
信じられないくらいの高みにあったことが分かります。
今ではさらに優秀録音が増え、
CDも信じられないくらいの量が店頭に並んでいますが、
カラヤンの「惑星」が自分にとっての原点だなぁ...
と、つい昨日再聴したばかりですので、
改めて思い至ったのでした。