ORFEOから、
ハンス・クナッパーツブッシュの、
新しいCDがリリースされました。
全部ベートーヴェンで、
・「コリオラン」序曲、
・ピアノ協奏曲第4番(ピアノはウィルヘルム・バックハウス)
・交響曲第7番
(以上は1954年1月17日のライヴ録音。収録順は異なります)
・交響曲第3番「エロイカ」
(1962年2月17日のライヴ録音)
オーケストラはウィーン・フィルです。
今まで、出所の怪しかった音源でのLPやCDは出ていましたが、
大体どれも音が悪く、
今回のORFEO盤はそれらと一線を画す音です。
今までの様々なレーベルのCD(LP)をお持ちの方は、
買い替える意義は大いにあります。
クナッパーツブッシュはワーグナーが大得意で、
版の問題は別にしてブルックナーの紹介者でもありましたので、
ベートーヴェンは少し異形ではないか?
という議論があります。
また、ワーグナーのような響きのベートーヴェン...
というような意見もたまに見かけますが、
実は、当然のようにクナッパーツブッシュは、
ワーグナー、ブルックナー、ベートーヴェンでそれぞれ演奏方法を変えています。
ドイツの指揮者であるだけに、
若いころから、そのベートーヴェン演奏の経験は半端ではありませんでした。
ワーグナーのおまけのようにベートーヴェンを指揮していた、
という考え方は誤っているとしか言いようがありません。
例えば同じ時代を生きた、
ウィルヘルム・フルトヴェングラーのベートーヴェンと、
クナッパーツブッシュのベートーヴェンはまるで異なります。
フルトヴェングラーは、
まさしく今、生まれてつつあるかのように、
ベートーヴェンを再現し、
最終楽章の最後に向けて、音楽を開放してゆきます。
クナッパーツブッシュは、
スコアを深く掘り下げ、
迫力がありながらも、
非常に滋味深い、
感動的な演奏を繰り広げてゆきます。
ORFEO盤に収録されている、
第7番も「エロイカ」も、
大変魅力に富んだ演奏録音です。
これはピアノ協奏曲第4番も「コリオラン」序曲も同じです。
交響曲第7番第2楽章、
いわゆる「不滅のアレグレット」も素晴らしいですし、
「エロイカ」第2楽章の葬送行進曲も、
非常な高みにある演奏であるといえます。
さらに、両交響曲の第3楽章スケルツォでも、
トリオの極端な遅さは、
クナッパーツブッシュのベートーヴェンを聞く楽しみでもあります。
今回のORFEO盤は、
「モノラルは聞かない」という方にはお薦めしませんが、
大歓迎の復刻といえます。