5年前に東関東大震災が起こり、
まだその傷跡が癒えないときに、
熊本、大分で大きな地震がありました。
被災された多くの方は、
今までの日常とは異なる、
大変な時間を過ごしておられると思います。
焦っているのに何もできない...
店長もよく分かります。
店長は阪神淡路大震災を経験しています。
阪神淡路大震災の時、
武庫川以西のような大きな災害はありませんでしたが、
尼崎市も激しい揺れに見舞われました。
4軒向こうの古い家屋は崩れ落ち、
すぐ近くの神社の石でできた鳥居が無残にも崩れ落ち、
社殿も床から上がすぐに屋根状態になっていました。
店長の家は無事でしたが、
家の中はむちゃくちゃになりました。
直下型の地震でしたので、
屋根の根田が巨大な振動で外れ、
他の横梁に乗っかった形で、
実は今もそのままです。
直そうと思ったら、家の建て替えになってしまいますし...。
数年後に、業者に瓦を固定しなおしてもらい、
雨漏りもしないし、
普段は何ともないのでそのままにしていますが、
次に大きな地震が来たら...と思うと、
あきらめるしかないのかな、などと考えております。
地震の後は、
すぐに音楽を聞こうという気は起らなかったです。
リスニングルームの片づけに時間がかかったという仕方のない面はありますが、
しばらくは生活面に必死で、
音楽どころではなかったのが実情です。
それに、インターネットはまだ普及していない頃ですので、
情報はラジオやテレビに頼らざるを得ませんでした。
電気の復旧は早かったので、
ラジオやテレビが震災後の情報源でした。
音楽よりもまず、それらの情報に飢えていました。
震災後、少し落ち着いてきて、
好きな音楽は…さて何を初めて聞いたかな?
と思い出してみようと思うのですが、
すでに20年以上前のことですからなかなか思い出せません。
でも、たぶん店長のことですから、
ベートーヴェン/交響曲第3番「エロイカ」であったような気がします。
誰の指揮した「エロイカ」であったのかはすでに記憶の彼方ですが、
大きな災害の後に聞きたい「エロイカ」は、
ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団の
ステレオ録音であったような気がします。
ワルター晩年の「エロイカ」は大きなスケール、
柔らかな響きで、今もって大好きな「エロイカ」です。
店長の一番好きな「エロイカ」は、
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィルの1953年盤ですが、
その他のステレオ録音では、
カラヤンの1983年盤とワルター盤が全く異なる内容の演奏録音ながら、
昔から両方とも大好きでした。
ワルターのベートーヴェンというと、
交響曲第6番「田園」が一番有名ですが、
店長はワルターの「エロイカ」と第7番がことのほか好きでした。
ワルター晩年の「エロイカ」は、
ゆったりと大河が流れるようで、
数々の試練を乗り越えた老大指揮者の伝えたい、
「何か」を感じ取ることのできる、
数少ない演奏録音の一つだと思っています。
今、熊本、大分の音楽ファンには、
まだ音楽を聞くゆとりのない人が多いかもしれません。
避難所だったら、なかなか音楽なんて聞けませんし。
でも、もし家が何とか無事なら、
自分もそうだったのですが、
レコードやCDをセットするまで、
なかなかその気が起こらないのは確かながら、
やはり、聞き始めると音楽の持つ力は大きいと実感できます。
もし、オーディオ機器が被災していなければ、
好きな音楽のどれもいいですから、レコードやCDをセットして、
ピックアップを下ろしたり、スタートボタンを押してみてください。
何かしらの「力」になってくれるものと思います。