J.S.バッハのクラヴィア曲といえば、
ゴルトベルク変奏曲と6曲のパルティータを一番よく聞いたでしょうか。
店長がクラシック音楽を聞き始めたころは、
J.S.バッハのクラヴィア曲というと、
グレン・グールドによるピアノの演奏が全盛で、
ヘルムート・ヴァルヒャ(ヴァルハ)や
カール・リヒターのチェンバロでなければ、
たいてい、グレン・グールドのレコードを買っていたようなところがあります。
グレン・グールドによるバッハは今でも好きで、
たまに...になってしまいましたが、
今でも聞きます。
ほぼ、バッハのクラヴィア曲はグールド一辺倒だったところに、
スヴャトスラフ・リヒテルの「平均律クラヴィア曲集」を聞いたり、
アンドラーシュ・シフのいろいろな録音がDECCAから出るようになったりして、
グールドを離れて聞くようになりました。
遡ってディヌ・リパッティも好きでよく聞きましたっけ。
最近ではアンジェラ・ヒューイットが優れたバッハの録音をリリースしていますね。
「イギリス組曲」はヒューイット盤が今でも一番好きです。
チェンバロでの演奏は、
ピアノとは別物と思っています。
バッハのクラヴィア曲では、
やっぱり好きなのはパルティータです。
今でもグレン・グールド盤とシフ盤を交代で聞いているようなところがあります。
でも、本当に一番好きな録音は、
全曲録音には発展しませんでしたが、
クラウディオ・アラウの最晩年の録音です。
この録音を初めて聞いた時にはショックを受けました。
ひじょうに澄んだ音で、
何気ない演奏なのに、
ものすごい深みを感じ取れる演奏録音でもあります。
一言、「参りました」の録音でした。
アラウはアルゼンチン出身で、
ヨーロッパでも勉強し、コンサートを盛んに行いました。
アラウには自伝があり大変面白いです。
邦訳もありますので、アラウに関心のある方にはお薦めです。
アラウのピアノはその独特のゆったりとしたテンポ、
深みのあるピアノの音色が特徴で、
他のピアニストの追随を許さないほどです。
特に、店長はモーツァルトやベートーヴェン、
シューベルト、さらにはショパンなどでも、
アラウの演奏録音は大好きでした。
アラウのバッハの演奏録音は極端に少なく、
おそらくワンダ・ランドフスカへの尊敬の念からでしょうか、
あるいはバッハのクラヴィア曲はチェンバロで弾くべしとの考えからでしょうか、
アラウの演奏史の初期と、
この最晩年のパルティータしか、
アラウによるバッハを店長は聞けていません。
挿話として、
アラウは奥さんを亡くし、
長く自身で封印してきたバッハを再び取り上げ、
録音したのがパルティータだったということです。
第1番、第2番、第3番、第5番を録音し、
第4番と第6番を録音する前にアラウは亡くなりました。
でも、その挿話を抜きにしても、
アラウのパルティータは琴線に触れてきます。
機械仕掛けのようなバッハではない、
少し枯れてはいても、
生きたバッハを聞くことができる、
稀有の演奏録音だと思っています。