ブラームス/交響曲第1番は、
以前にミュンシュ/ボストン交響楽団の
RCA盤を取り上げたことがありますが、
今回はオットー・クレンペラー指揮
フィルハーモニア管弦楽団の、
1956年から1957年にかけてのEMIセッション録音です。
これは何回も再発されていますので、
今、流通しているCDのジャケットは、
全く違ったものになっていると思います。
さらには、ボックスセットにも含まれていますし。
ブラームス/交響曲第1番は、
ミュンシュのように情熱的に煽っても聞きどころは多いし、
フルトヴェングラーのように、
情動的な演奏でも大変面白いです。
その他、同曲は名盤といわれるレコードやCDも数多く、
実際のコンサートで聞いても、
必ずと言っていいほど感動が得られる楽曲でもあります。
以前、アマチュアオーケストラの、
燃えるようなコンサートを聞いたことがありますが、
指揮者、オーケストラと一緒に、
聴衆も熱くなる大熱演でした。
テレビドラマ版「のだめカンタービレ」でも、
同曲が効果的に使われていましたっけ。
確か、実在しない千秋真一指揮のCDまで出ていたような...。
その中で、
クレンペラーの演奏録音は、
第4楽章終結まで異色ともいえる安定感と、
規範的ともいえる楽曲の組み立てが特徴です。
第3楽章、第4楽章のテンポは意外と快速で、
クレンペラー最晩年の怪物的な遅さはありません。
でも、この演奏録音は何度でも戻って聞けるような、
「これこそがブラームスの規範じゃないか?」
と思える高みにあります。
演奏は重厚で、もっと熱情的な熱い演奏録音もありますが、
抜群のバランスの良さを聞くことができる演奏録音でもあります。
クレンペラーの演奏録音の中には、
非常にとっつきにくいものもあるのですが、
さすがにブラームスではそういうことはありません。
特に指揮者を挟んでの第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンの両翼配置は、
ステレオ録音で聞くと、
実に面白く、効果的であることが分かります。
第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと、
舞台の左から並ぶストコフスキー配置では、
この効果を聞くことはできません。
クレンペラーは、
193cm身長のあったウィルヘルム・フルトヴェングラーよりもさらに背が高く、
2mを超えているのでは?と思われる巨人でした。
その本公演での指揮姿は、
大鷲が羽を広げているようだともいわれましたが、
リハーサル映像を見ると、
かなり細かなところまで指示を出す、
どちらかというと痙攣的な指揮姿でした。
当時の指揮者の中では一番の即物主義者で、
そのとっつきにくい音楽はクレンペラーの個性でもあります。
ところが、
何でもいいですから(店長はマーラー/「大地の歌」からですが)、
いったんクレンペラーの音楽に心を揺さぶられると、
どれもこれも、「これが規範」とも言えるような、
その音楽業績の威容が明らかになってゆきます。
今、クレンペラーの遺産の多くがCD廉価版ボックスセットで手に入ります。
店長がクレンペラーのLPやCDを漁っていたころは、
ボックスなどはなく、それぞれバラで揃えたものばっかりです。
まだクレンペラーの音楽をそれほど聞いていない人には、
荷が重そうに感じられるボックスセットですが、
ある程度バラで揃えてしまった店長などには、
とってもうらやましい環境に思えるのでした。