春になると店長が聞きたくなる楽曲、
シューマン/交響曲第1番を前回取り上げましたが、
今回はシューベルト/交響曲第5番です。
本当に「春」にふさわしい、
楽しく美しく、心がウキウキするような音楽です。
シューベルト/交響曲第5番は、
地味なようでいて比較的録音の多い楽曲で、
いろいろなLPやCDを漁っていると、
「あれ?これにも入ってる...」という感じで、
あれこれ聞くことができています。
シューベルトがモーツァルトに回帰をした、
ともいわれる作品で、
古典的な格調の高さと、
シューベルト独特の「歌」が共存した楽曲でもあります。
シューベルトの交響曲第8(7)番「未完成」第1楽章の真っ暗さ加減とは真逆の、
光とやさしさに満ちた素敵な音楽が全楽章を支配します。
全楽章といっても、全曲は短いですが。
たぶん、コンサートなどでは最後を飾る大曲ではなく、
一番最初に演奏される楽曲かもしれません。
店長は一時期、
シューベルト/交響曲第5番にはまっていた時期があります。
いろいろ漁盤した中で、
店長が最も好きな演奏録音は、
レナード・バーンスタイン若かりし頃のCBS盤です。
ではそのほか...ということになると、
ブルーノ・ワルターやカール・ベームをはじめ、
ギュンター・ヴァントやあれこれ交響曲全集に入っている演奏録音、
果ては古楽器演奏に至るまで聞いてみたのですが、
なかなかピンとくる演奏録音にはお耳にかかれません。
そこで再発見したのが
(LPで持っていましたが、これほど自分がはまるとは思っていなかった)、
イギリスのサー・トーマス・ビーチャム指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の古いステレオ録音でした。
シューベルトの交響曲第5番を物々しく演奏すると、
ベートーヴェンの亜流のようになってしまい、
ロココを強調すると、
むしろロココを通り抜けてバロック音楽になってしまう、
という、難しい面があるようです。
その点、ビーチャムの演奏は柔らかく、しかも優雅で、
優しくてもロココ音楽とは違う、さてまたベートーヴェンとも違う、
かといってロマン派の音楽でもない、
という、シューベルト/交響曲第5番に必要な、
非常に中庸を得た演奏録音ではないかと思っています。
演奏は老獪です。
バーンスタインの若々しく生真面目な演奏録音とも異なり、
大人の音楽になっています。
トーマス・ビーチャムは、
今の日本ではあまり聞かれる機会は少ないのかもしれません。
しかし、存命当時は作曲家からも他に指揮者からも一目置かれる大指揮者でした。
イギリスのロイヤル・フィルを組織したプロデューサーでもあります。
エイドリアン・ボールトや、
ジョン・バルビローリの先達として、
大きな影響力と実力を兼ね備えた指揮者であったといっても過言ではありません。
ビーチャムのレパートリーはたいへん広く、
今でもあれこれ聞くことが可能です。
イギリス流「大人の音楽」を聞くには、
もってこいの指揮者だといえます。