ニコラウス・アーノンクールが亡くなったそうです。
86歳ですので、高齢といえば高齢です。
昨年12月に、体調不良を理由に引退声明を出していましたので、
引退後、約3か月程度で亡くなってしまったのですね。
アーノンクールは古典音楽演奏の革命児でした。
最初はバロック音楽からで、
鋭角的なアーティキュレーション、
古楽器による響きは、
それまでもあった古楽器演奏の録音とは一線を画していました。
ただ、多くはカール・リヒター、
そしてオットー・クレンペラーなどのレコードに多く接してきた店長は、
アーノンクールの演奏は、
刺激的でものすごい面白さを感じながらも、
なかなか馴染むことができませんでした。
古楽器演奏では、
トレヴァー・ピノックやクリストファー・ホグウッドによる演奏録音のほうが、
なじみやすい響きであったことは否定できません。
そんな中、1980年頃から録音されはじめた、
モーツァルトの交響曲録音はLP最後の時代の、
店長のフェヴァリッツになりました。
いつも、
アーノンクールの指揮で演奏しているコンツェントゥス・ムジクスではなく、
アムステルダムのコンセルトヘボウ管弦楽団という名門との録音です。
確か、日本では、
1982年に録音された交響曲第41番「ジュピター」が最初のリリースではなかったかと、
記憶しています(実際には3番目だったそうです。
店長がアーノンクールのモーツァルトを認識した最初のレコード、ということになりますね)。
「折衷型」の演奏ともいわれましたが、
それだけではなく、
スコアの指示の繰り返しをすべて行っているため、
非常に長尺の演奏録音になっていました。
LP1枚に「ジュピター」しか入っていないなんて、
今風に言うとコストパフォーマンスの悪いレコードですね。
アーノンクールの「ジュピター」を買った店長は、
その後発売されたモーツァルトのレコードをすべて購入、
今でも棚にはアーノンクールのモーツァルトのレコードが並んでいます。
当時、全集盤としてはカール・ベーム指揮のものはありましたが、
ブルーノ・ワルターの演奏録音と対極のようにして、
アーノンクールでモーツァルトになじんでいった面があります。
アーノンクールは、
その後、ロマン派の楽曲にまで手を伸ばしました。
小生の好きなドヴォルザーク/交響曲第7番の録音もあり、
なんとも低回趣味すれすれの不思議な演奏録音で、
バロックを刺激的に演奏するアーノンクールとは、
全く異なる内容の演奏に驚いたことがあります。
アーノンクールの主戦場となるバロックでは、
それほど「共感して聞く」ということが薄かったのですが、
ベートーヴェン以降のロマン派での楽曲では
「へ~」と感心するものが多く、
特にヴェルディ/レクイエムは凄かったな、
といまだにその記憶が残っています。
アーノンクールは現代の演奏史の中で、
メルクマールを作った人でした。
一つの時代が終わったことを感じざるを得ません。