世に、LPからCDへの復刻を中心としたレーベルが多数存在します。
店長は、ファンであるクナッパーツブッシュの初期の頃のCDが、
PIONEERによるWESTMINSTERのLP板起こしでしたから、
かなり古くからの付き合いになります。
CD初期の頃は、
テープが見つからなかった、
あるいは探そうともしなかったから、
手近なLPから復刻した...てなものが多かったような気がします。
ちょっとお手軽。
その後、
テープは劣化するぞ、LPからの板起こしの方がいいぞ、
ということで、腕に自信のあるマニアによる、
著作隣接権の切れたパブリックドメインと呼ばれる古い録音の、
LPからの板起こしCDが雨後の竹の子のようにできました。
店長は、
LPからの板起こしには本当は否定的で、
古い録音でテープがあったものは、
そこから復刻されたCDを優先しています。
LPの音が聞きたかったら、自分でLPを聞きます。
その装置も持っていますし。
でも、テープがない、
テープの劣化が著しく激しくてCD化したら極端に音が悪くなった、
そのLPが極端に希少で、どのプレスも入手できない、
てな場合には、
選択の余地はありませんので、LPからの板起こしCDを買って聞きます。
今回取り上げる、
ジャン・ヴェールによるフォーレも、
LPはプレス枚数が非常に少なく希少盤で、
テープは残っているのか残っていないのか分からない状態です。
今までCD化されたという話を小生は知りません。
あったかも知れませんが。
それに、
ジャン・ヴェールは非常に地味なピアニストで、
ピアノソロはフォーレ1枚しかなかったそうですので、
「幻のピアニスト」の称号が相応しい人のようです。
フォーレは店長が大好きな作曲家で、
ピアノ曲集もあれこれ聞いては楽しんでいます。
キラ星のようなテクニシャンのピアニストもフォーレを録音していますが、
ジェルメーヌ・ティッサン=ヴァランタンのような、
地味だけど滋味深い演奏を聞かせてくれるピアニストによるフォーレには、
目がありません。
ジャン・ヴェールは、ティッサン=ヴァランタンよりもさらに地味で、
恐らくほとんどの人は知らないピアニストです。
店長も、名前だけ知っていて、
聞いたことのないピアニストでした。
SAKURAPHONという、
古いSPやLPの復刻レーベルが日本にあり、
非常に関心があったのですが、
今まで入手してきませんでした。
そのSAKURAPHONのカタログに、
ジャン・ヴェールの復刻が出ていると知り、
これは「聞いてみたい」という気持ちが大きくなり、
さっそく入手しました。
買って大正解のCDはそれほど多くありませんが、
SAKURAPHONのCDは買って大正解のCDでした。
自分の思い描いていた理想形のフォーレで、
プラモデルのバリのような余分なものはなく、
ピアノの音も素直で、
すっぴんの女性を思わせる飾り気のないものです。
ヴィルトゥオーゾのピアノではありませんが、
ジャン・ヴェールのピアノを聞いていると、
何気ないフォーレの心象風景までも、
CDに収められた音から想像できるかのようです。
LPからの復刻も成功していて、
SAKURAPHONの「粋」が感じられます。
ジャン・ヴェールのフォーレは、
非常に地味ですので、
派手な音楽を好まれる方にはお勧めできませんが、
フォーレの光と影、
そのたゆたうような瞬間に身を沈めたい方には、
是非盤としてお勧めできます。
SAKURAPHONには、ジャン・ヴェールの他、
「あ、これ聞いてみたい!」という復刻が目白押しです。
店長にとっては、
目が離せないレーベルのひとつです。