店長は27番まであるモーツァルトのピアノ協奏曲では、
第23番がことのほか好きで、
さんざん漁盤しました。
この羽毛のような軽やかさ、
第2楽章の美しさは極上の音楽体験をもたらしてくれます。
ところが、レコードやCDで聞くとなると、
ピアノは素晴らしいのに管弦楽がいまひとつとか、
管弦楽は驚くほど立派なのにピアノがイマイチとか、
演奏は素晴らしいのに録音がかなり古いとか、
満足できる演奏録音にはあまりたどりつけていません。
古楽器のフォルテピアノによる演奏録音もいろいろ聞きましたが、
フォルテピアノの早い減衰音は、
モーツァルト後期のピアノ協奏曲では不向きなんではないかと思えてしまうほど、
店長が満足できた演奏録音はありません。
レコード時代の話ですが、
マウリツィオ・ポリーニのピアノ、
カールベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏録音が出て、
その渇きがいっぺんになくなったようなところがあります。
1976年の録音ですから、
今となっては古くなってしまいました。
ポリーニとベームの演奏録音は、
両方ともその個性であったのか、
固めともいえる、ひじょうにまじめな演奏です。
中には「面白くない」と感じる人がいるかもしれませんが、
ピアノ協奏曲第23番では、
その生真面目さから、
そこはかとない軽やかさとしなやかさが聞けるようでもあります。
特にベームの指揮は弦楽器の音色が独特で、
強調はされていないけれど、
どこか浮遊するような感興があります。
ポリーニのピアノもきわめて美しく、
余裕を持って美しく楽曲を奏でて行きます。
格調の高さを失わず、
ピアノとオーケストラのバランスも極めてよく、
またアナログ後期の録音の音のよさでも
(確かデジタル録音ではなかったと思います)、
第23番では今のところ最も好きな演奏録音です。
ポリーニとベームのモーツァルトのピアノ協奏曲でのセッション録音は、
この第23番と第19番のカップリングしかありませんので、
楽曲の選び方にも、何らかの思い入れあったのではないか、
などと、想像してしまいます。