今まで、
夥しいほどのベートーヴェン交響曲全集を聞いてきましたが、
一体誰の指揮した全集に自分が一番感心したのだろう?
とCDやレコードの棚を見て思うことがあります。
全集として(でもバラで)最初に全曲を入手したのは、
確かブルーノ・ワルター盤(CBSのコロンビア響盤)のLPでした。
次がやはりLPでクレンペラー盤、
そして、フルトヴェングラーのEMI盤でした。
フルトヴェングラーは、長い間第2番が発見されず、
第8番を含めてかなり折衷的な全集であったと記憶しています。
その後、LPやCDを含めてよく覚えていないほどになってしまいましたが、
アルトゥーロ・トスカニーニ盤、
アンドレ・クリュイタンス盤、
ヘルベルト・ケーゲル盤、
ヘルマン・シェルヘン盤、
ヘルベルト・フォン・カラヤン盤(3セットあるのか...)、
ハノーヴァー・バンド盤
もちろん、ジョージ・セル盤、
クラウディオ・アバド盤、
フランス・ブリュッヘン盤、
ロジャー・ノリントン盤(新旧)、
エリオット・ガーディナー盤、
ヨーゼフ・クリップス盤、
レナード・バーンスタイン盤(新旧)
ルネ・レイホヴィッツ盤、
クリストファー・ホグウッド盤、
オイゲン・ヨッフム盤、etc...。
その他にもいろいろあったと思いますが、
店長がもう少し若いころ、
ベートーヴェン交響曲全集が出ると、
なぜか、ついつい手が伸びてしまっていたのでした。
それに、全集には発展しなかったけど、
ほぼ全集に近いという、
例えばカルロ・マリア・ジュリーニ指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団盤のような例もありますし。
店長の好きなハンス・クナッパーツブッシュにも、
全集はとてもないけれど、かなりの放送録音があります。
その数多くのベートーヴェン交響曲全集の中で、
LP時代から、一体何回全集を買い直しただろう?
というセットが、オットー・クレンペラーのEMIセッション録音です。
CDだけでも、ばら売りを含めて棚には今でも4セットあります。
それに、1960年ウィーン芸術週間でのベートーヴェン・チクルスなんてのも。
TESTAMENTからロンドンでのライヴ録音も出ていますので、
いったい、いくつクレンペラーのベートーヴェンを買ったら気が済むのやら...。
なんで、そんなにクレンペラー盤がいいのか?
EMIのステレオセッション録音は録音自体がスカスカだし、
聞き手をまったく意識していないかのような、
冷たい演奏の録音もあるのに?
でも、クレンペラーのベートーヴェンには、
それでも聞き手を納得させてしまう、
「何か」があるのです。
古楽器では表現できない「何か」、
単にスコアを再現しました的ではない「何か」。
「何か」って何だろう?といつも思うのですが、
少し遅めのテンポ、巨大なスケールは確かで、
即物的なのにそれを感じさせない、
奥深さのようなものを感じてしまいます。
クレンペラーは大器晩成型の指揮者だとよく言われますが、
なんの、第2次大戦前のクロル・オペラ時代、
ロサンジェルス・フィルとのアメリカ亡命時代の録音を聞くと、
早い時期から大指揮者であったことがわかります。
もし、あなたがクレンペラーのベートーヴェンを持っていないとしたら、
遅くはないのでぜひ聞いてみてください。
最初は「なんてとっつきにくい演奏だろう?」と思って
何回も聞いているうちに、
他に指揮者のベートーヴェンがなんとなく物足りなくなってしまう、
不思議な演奏録音でもあります。