モーツァルトの白鳥の歌でもあるレクイエムは、
最初の入祭唱から引きずり込まれるような魅力を持っています。
モーツァルトは「ラクリモーサ」までを作曲、
その後は断片が残っているだけでしたが、
弟子のジェスマイヤーが補筆完成し、
レクイエムを発注したフランツ・フォン・ヴァルゼック伯爵の元に届けられました。
ヴァルゼック伯爵の名前で出版される予定でしたが、
モーツァルトの妻が、モーツァルトの作品として出版、
ヴァルゼック作曲「レクイエム」は、
モーツァルトの楽曲として世に出ることができました。
ジェスマイヤー版はあまりよくないという意見があり、
後年、他の編纂者によっての補筆完成版がいろいろとありますが、
結局、ジェスマイヤー版でいいのではないかと店長は思ってしまっています。
ジェスマイヤーは確実にモーツァルトと同じ空気を吸っており、
後年の編纂者は20世紀の最近の人がほとんどです。
科学的かもしれませんが、
いろいろ聞いてみて、やはり違うな、というのが店長の感想です。
レクイエムの名盤として、
カール・ベーム指揮ウィーン・フィル盤や、
ヘルマン・シェルヘン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団の録音があります。
その他にも、数多くのレクイエムに接してきましたが、
ベーム盤やシェルヘン盤が優れているということには異論はありません。
古楽器の演奏者、指揮者もレクイエムは必ずといっていいほど録音していますが、
その中でも、ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリザンの演奏録音が、
かなり聞く価値が高いのではないかと思っています。
クリスティはフランス・バロック・オペラの再現に力を入れ、
多くの優れた業績を残していますが、
レクイエムもかなり劇的で、
しかも透明感を失わないという稀有の演奏録音でもあります。
録音は1994年と、少し古くなりましたが、
フィルアップされている「アヴェ・ヴェルム・コルプス」も素晴らしく、
今のところ、
レクイエムを聞きたいと思うときには、
一番よくCDプレーヤーのトレイに入る演奏録音です。