モーツァルトの楽曲は、
すぐにその素晴らしさが分かる人と、
時間を置かないとなかなか理解できない人に分かれるようです。
店長は長い間後者でした。
モーツァルトなんて、
どこが面白いんだろう?
と、ずっと思っていましたが、
ある日、偶然、晩年に作曲されたクラリネット五重奏曲を聞き、
その優しく美しい音楽の虜になって以来、
モーツァルトの音楽が好きになり、
次々といろいろな楽曲を聞いて、
今もモーツァルト好きは続いています。
クラリネット五重奏曲を聞く前、
唯一持っていたレコードが、
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の
交響曲第40番と第39番が収録されたCBS盤でした。
セルは1970年、クリーヴランド管弦楽団を率いて来日、
万博クラシックをはじめ、東京でも公演を行いました。
小生が高校生の頃で、
お小遣いがあまりなく、
その頃注目していたピエール・ブーレーズも一緒に来日したことから、
ブーレーズの公演を優先してしまい、
セルの公演は聞けずじまいでした。
長じて、セルの凄さを知り、
セルの演奏を生で聞けなかったのが今でも痛恨の思いです。
セルのモーツァルト/交響曲第40番、第39番は、
ひじょうに透徹した、
どちらかというと冷たく厳しい演奏です。
モーツァルトを聞き始めた頃はよく分からなかったのですが、
セル盤がひじょうに優れた、
唯一無比ともいえる高みにあることは、
その後、さまざまな演奏を聞いて知ることができました。
特に第40番では、
さまざまな演奏が生ぬるく感じられてしまって、
今でも、なかなかセル盤の影響を抜け出せないでいます。
セル盤以外でその凄さがじわじわと伝わってきたのが、
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団のEMI盤です。
これは最初聞くと、何がいいのかよく分かりませんでした。
ところが、オペラをいろいろと聞くようになって、
クレンペラー盤を聞きなおすと、
「これは、もしかしたらものすごい演奏ではないか?」と思えるようになり、
その印象は今でも変わっていません。
第40番は小林秀雄の「モオツァルト」が有名で、
ある日、突然頭の中で鳴り出した第1楽章の「疾走する悲しみ」という
非常に美しい文章があり、
多くの人が影響されています。
店長も大きく影響されましたが、
楽曲そのものの美しさ、という点で、
セル盤を大きくお勧めしたいと思います。