マーラー/交響曲第1番は、
ワルターやバーンスタイン旧盤のCBSで育ったようなところがありますが、
カラヤンの抜粋、アバドの旧全集、バーンスタイン新全集など、
ドイツ・グラモフォンもマーラーの交響曲録音に熱心になり、
ジュゼッペ・シノーポリも、
ドイツ・グラモフォンにマーラー交響曲全集を録音しました。
シノーポリの指揮姿は独特で、
マーラーの全集盤リリース当時、
よく来日していたことから、
コンサートはもちろん、
映像でもシノーポリの指揮姿を見ることができました。
まるでハリネズミの突進のような指揮姿でした。
シノーポリのマーラーは、
交響第5番の録音から始まり、
第2番「復活」、第1番…の順番ではなかったかと記憶していますが、
確かではありません。
シノーポリのマーラーでは、
店長は第2番「復活」を聞くと、
なぜか「懐かしい」という気持ちになるのですが、
第1番が非常に優れた演奏録音で強く印象に残っています。
録音も非常によく、
演奏はしっかりとしたトゥッティと、
逆にとろけそうになるほど情感がたっぷりな演奏で、
非常に大きな満足感の得られる演奏録音です。
第2番「復活」以降のマーラーの交響曲では、
シノーポリの演奏録音に好悪が分かれるかも知れませんが、
第1番は独特の演奏ながら、
比較的好悪が分かれにくいのではないかと思います。
最近、ドヴォルザークをよく聞くようになって感じるのは、
チェコ国民楽派といえる、
スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェクとマーラーとの親近性です。
マーラーはドイツ、オーストリアで主に活躍しましたので、
ドイツ、オーストリア系の作曲家だと認識されがちですが、
マーラーはチェコのボヘミア地方で生まれ育ちました。
ドヴォルザークのさまざまな作品を聞いていると、
マーラーにも同じ民族性というか、共通の地域感覚というか、
そういうものがあるのではないか?と感じられます。
また、マーラーはチェコに同化したユダヤ人でしたので、
そちらの方を強調されるきらいがありますが、
チェコという出生地がマーラーに及ぼした影響は、
非常に大きかったのではないかと考えることができます。
カレル・アンチェル、ヴァーツラフ・ノイマンなど、
チェコ出身の大指揮者も、
マーラーを得意にして盛んに演奏していたことを考えると、
マーラーはチェコの人々にとって「おらが国」の作曲家なんだろうな、
といえます。
マーラー/交響曲第1番に流れる音楽は、
チェコ、ボヘミア地方の風景が随所に溶け込んでいます。
歌謡的な音楽ではゆったりととろけそうになり、
トゥッティではオーケストラの大爆発が起こるシノーポリ盤を聞いていると、
マーラー若かりし頃の穏やかな心象風景と、
誇大妄想的な気宇が湧き出るようで、
ひじょうに聞き応えがあります。