フォーレ/ピアノ五重奏曲は2曲残されました。
Op.89と115ですから、
2曲のピアノ四重奏曲の後に書かれた作品です
(ピアノ四重奏曲第1番はOp.15、第2番はO.45)。
フォーレの曲想が拡大したからでしょうか?
さらに、ピアノ五重奏曲第1番と第2番の間には15年の隔たりがあり、
第1番はフォーレの作曲期間の中期、
第2番はほぼ晩年の作品群に入ります。
第1番はひたすらに美しく、
特に第1楽章冒頭のピアノによる分散和音はキラキラと
冷たく輝くようです。
最終楽章まで大変な名曲で、
第2番は他の作曲家によるピアノ五重奏曲を含めて、
非常な高みのある作品といわれています。
店長はLP時代からフォーレの室内楽が好きで、
EMI、ERATOのレコードを集めたり、
フランスのシャルランというレーベルのレコードを買っては、
いたく気に入っていました。
特にシャルランのレコードの音はワンポイント録音で独特の不思議な温かみがあり、
長い間愛聴盤でした。
国内盤も出ていましたが、
フランス盤のレコードを探して買っていましたっけ。
今はもうレコードは手放してしまい、
あれこれCDの復刻盤で我慢しています。
CDショップに行く度にフォーレの棚を探索するようになって、
まだフォーレのピアノ五重奏曲のCDが少ない頃に出会ったのが、
ピーター・オースのピアノ、
アウリン弦楽四重奏団の演奏録音でした。
ピーター・オースはアメリカで頭角を現した人
(たぶん、アメリカ人だと思いますが)、
アウリン弦楽四重奏団はメンバーにイギリス人が混じっていますが、
基本的にはドイツの弦楽四重奏団です。
それまで、フランスの演奏者による演奏録音しか知りませんでしたので、
「これ、どういう団体で、独奏者はどういうひとだろう?」と思いつつ、
未知の演奏者の録音を期待を持って購入しました。
cpoというドイツのレーベル自体、
陽の当らない作曲家の作品をリリースしているというイメージがあり、
「へえ、ドイツのレーベルがフォーレか...」などと思っていました。
そして、購入して大正解でした。
フランスの演奏者のように、
自由に演奏しながらでもまとまった...
というより、アンサンブル重視の演奏録音ですが、
ピアノがひじょうに美しく、
弦楽四重奏もしっかりとまとまっています。
それでいて、
フォーレの演奏に欠かせない情感もしっかりと聞くことができます。
フォーレ/ピアノ五重奏曲はいろいろと持っていますが、
その中でも出色の演奏録音だと思います。
フォーレ/ピアノ五重奏曲の、
ひとつの理想形とも言える演奏録音です。