「ニーベルングの指環」4部作は、
ワーグナーが1848年から1874年というかなりの期間をかけて作曲したオペラです。
もっとも、「ジークフリート」の作曲途中、
中断して「トリスタンとイゾルデ」、
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が作曲されましたが。
「ニーベルングの指環」は、4日間に渡って上演されます。
序夜「ラインの黄金」
第1日「ワルキューレ」
第2日「ジークフリート」
第3日「神々の黄昏」
序夜「ラインの黄金」は他の3つのオペラに比べ、
演奏時間は短めで1幕もののオペラです。
4つのオペラはそれぞれに聞き所があり、
単独で公演されることもあります。
「ニーベルングの指環」は北欧神話を元にした秘境的とも言えるオペラで、
日本では、長い間、半ば伝説化していたようなところがあります。
レコードでの全曲盤はDECCAのショルティ盤を待たなければなりませんでしたし、
実演は1967年のバイロイト引越し公演で
日本では「ニーベルングの指環」の内、
「ワルキューレ」が鳴り響いた最初だったのでしょうか?
レコードのための全曲録音は、
ゲオルグ・ショルティ指揮のものが最初で、
次にカラヤン盤が続きました。
その後、バイロイト・ライヴがいろいろと出るようになり、
カール・ベーム盤が続き、
フルトヴェングラーのローマとミラノでの録音も聞けるようになりました。
レコード時代、「ニーベルングの指環」は
LP15枚くらいあり(実際に何枚だったか忘れました)、
購入にも覚悟がいりました。
店長はカラヤン盤をバラでまず購入、
リリース順とは逆に、次がショルティ盤です。
その後、
ハンス・クナッパーツブッシュのバイロイト・ライヴ1957年盤を聞き、
一発でマイ・フェヴァリッツが変わりました。
クナッパーツブッシュは、
1951年、1956年、1957年、1958年と4回、
バイロイトで「ニーベルングの指環」を指揮しています。
1951年は残念ながら「神々の黄昏」のみ世に出ています。
1957年盤はイタリアのチェトラからレコードでリリースされていました。
CD時代になり、
クナッパーツブッシュによる1956年から1958年の「ニーベルングの指環」は、
一時期、そこそこの音質で不自由なく聞けるようになりました。
今はまた、なかなか入手しづらくなってきていますが…。
「ニーベルングの指環」は、
ステレオでなくても、モノラルでも充分楽しめます。
どのような音楽になっているのか?の方が問題です。
クナッパーツブッシュの
1956年、1957年、1958年、いずれも素晴らしい演奏録音ですが、
今まで聞いてきた「ニーベルングの指環」で最強の演奏録音は、
クナッパーツブッシュの1957年バイロイト・ライヴと、
クレメンス・クラウス指揮1953年バイロイト・ライヴでした。
クレメンス・クラウスの1953年は、
バイロイトと仲違いをしたクナッパーツブッシュの代役での指揮でした。
クナッパーツブッシュの「ニーベルングの指環」は
幾分重い方向で悲劇に重点を置いており、
クレメンス・クラウスの「ニーベルングの指環」は、
オペラ全体を実に楽しく聞かせてくれます。
どちらもモノラルながら超弩級の演奏録音です。
ただ、やはり「ニーベルングの指環」をその雰囲気まで味わおうと思うと、
クナッパーツブッシュの録音が凄いな、と感じてしまいます。
クナッパーツブッシュの「ニーベルングの指環」では、
ORFEOから正規でリリースされた1956年盤に比べて、
1957年と1958年盤はモノラルの放送音源ながら驚異的に音がよく、
1957年盤では、ハンス・ホッターのヴォータン、
アストリッド・ヴァルナイのブリュンヒルデ、
「神々の黄昏」でのジークフリートのウォルフガング・ウィントガッセン、
「ワルキューレ」でのジークリンデのビルギット・ニルソンや
ヨーゼフ・グラインドルなど、
聞いているほうはもうたまらないほどのキャスティングです。
何より、1957年盤はクナッパーツブッシュのテンポが素晴らしく、
「ワルキューレの騎行」の場面はなんだかなぁ…ですが、
全体を通して、浸りこんで聞ける演奏録音です。
1957年盤がおそらく最強の「ニーベルングの指環」全曲録音ですが、
1958年盤ではさらにテンポが遅くなっており、
ハンス・ホッターやヴァルナイ、ウィントガッセン、グラインドルの他、
リタ・ゴールのフリッカがものすごい聞き物で、
余力のある方には1958年版も是非盤としてお薦めします。
音は1957年盤よりも多少ですが、さらに良くなっています。