「パルジファル」はワーグナー最後のオペラで、
舞台神聖祝典劇といわれています。
第1幕から、なんだか仏教説話のようで
(ワーグナーは仏教説話を好んだそうです)、
「お経みたい」という人もいます。
第1幕の聖杯城への舞台転換まで、やたらと長いですし…。
「パルジファル」はワーグナーの独特の宗教物語から嫌う人も多く、
一時期はワーグナーに私淑した哲学者フリードリヒ・ニーチェなど、
真っ向から「パルジファル」を批判しました。
でも、店長のようなクナッパーツブッシュ・オタクからすると、
やはり、かけがえのないオペラです。
1951年から1964年まで、
クナッパーツブッシュによる「パルジファル」は、
13種類ものバイロイト・ライヴ録音を聞くことができます
(厳密には1951年はDECCA-TELDEC録音で、本番とリハーサルから編集され、
完璧なライヴではありませんが)。
店長はその中でも1952年と1954年のライヴ録音が好きなのですが、
その他の録音も、どれをとっても素晴らしい演奏録音ばかりです。
でも、そのほとんどがモノラル録音の中で、
1962年だけ、PHILIPSによるステレオ録音が行われました。
PHILIPSは当時バイロイト・ライヴをステレオで録音しており、
その一環での録音です。
1962年の「パルジファル」は、
パルジファルがウォルフガング・ウィントガッセンではない、
クンドリーがマルタ・メードルではない、
などの店長のわがままなマイナス面はむろんあります。
ジェス・トーマスやアイリーン・ダリスも非常に優れた歌唱だと思いますが、
あれこれ聞くと贅沢になってしまいます。
でも、クナッパーツブッシュの「パルジファル」が
優秀なステレオ・ライヴで残された…、
ということには、感謝しきれないほどの意義があります。
クナッパーツブッシュには全曲だけではなく、
1942年の第3幕の録音も残っていますが、
最初、劇的であった演奏がだんだんと自然体へと変化し、
1962年盤は、少し緩めかな、と感じるほどかなりの自然体での演奏です。
その代わり、それまでの録音と比べてテンポは少し速くなっています。
聞き所は多いです。
第1幕への前奏曲はもちろん、
第1幕舞台転換の音楽、
第2幕花の精たちの誘惑とクンドリーの苦渋に満ちた告白、
第3幕の聖金曜日の音楽など、
長いオペラなのに、あちこちすぐに思い出してしまいます。
第1幕の舞台転換の音楽は壮大で素晴らしく、
第2幕の花の精たちの踊りは夢見るようで素敵です。
そして最後の聖金曜日の音楽は、
「パルジファル」という、長大なオペラを聞いてきて、
「ああ、聞いていて良かった」と思える音楽です。
その他、グルネマンツの過去語り、
クンドリーの救われない告白、
アンフォルタスの苦悩など、
聞き込めば聞き込むほど、
「パルジファル」の魅力に取り付かれてしまいます。