「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、
今でこそ、その題名で伝わるようになりましたが、
昔は「ニュルンベルク(ニュールンベルク)の名歌手」でした。
その他にも「マイスター」の訳をどうするかで試行錯誤があり、
「ニュルンベルクの名人歌手」や、
「ニュルンベルクの親方歌手」という表記もありました。
「親方歌手」でも間違いでは無論ないのですが、
なんだか腹巻したおっさんが出てきそうで、
ちょっとイメージが異なります。
日本とドイツの職制の違いから、訳しにくい言葉ではあると思います。
そのためか、
ストレートに「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が
日本語題名の表記としては一般的になりました。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、
「トリスタンとイゾルデ」と同じく、
「ニーベルングの指環」の途中に作曲されました。
ワーグナーのオペラの中では数少ない喜劇的要素を持った作品です。
第1幕への前奏曲だけがやけに有名で、
録音も数知れずありますが、
非常に楽しいオペラですので、
全曲を楽しんだほうが得です。
舞台や映像がなくても音楽だけで楽しめます。
特に、第2幕のドタバタ、
第3幕のスペクタクルや最後のドイツの芸術への賛歌は聞き応えがあります。
敵役(というほど悪役ではありませんが)ベックメッサーは、
ワーグナー存命当時、ワーグナーを批判していた音楽評論家でユダヤ人
エドゥアルト・ハンスリックがモデルで反ユダヤ的なオペラだ、
という意見もありますが、
台本にはユダヤ人という言葉はありません。
むしろ、ベックメッサーは恋のためにとち狂った小役人と捉えたほうが、
オペラを素直に楽しめます。
また、最近のバイロイトではナチに迎合したオペラへの反省、
という視点から新たな演出が行われているようですが、
それがいいのか悪いのか、店長は判断停止です。
あまりいろいろ考えないで、
素直に「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を楽しんだほうが、
「得」だと思います。
いろいろと「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を聞きましたが、
1952年のクナッパーツブッシュによるバイロイト・ライヴに止めを刺します。
モノラルですが、録音も1952年という年代を考えてもなかなかよく、、
変な言い方ですが、舞台上の暗騒音も豊かで、
音だけ聞いていても、
バイロイトの席に座っているような臨場感があります。
特に第3幕の「徒弟たちの踊り」は、
舞台上のガタガタ、ゴトゴトいう暗騒音があったほうが楽しめるようです。
これは、舞台上の暗騒音を織り込んでワーグナーが作曲しているようで、
むしろ、音楽だけの静けさではしらけてしまいそうです。
セッション録音には暗騒音はありませんし…。
クナッパーツブッシュには、
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全曲が他にも3種類残っています。
DECCAセッション録音、
1955年バイエルン国立歌劇場ライヴ、
1960年バイロイト・ライヴです。
どれも聞き応えがありますが、
まず、1952年のライヴ録音をぜひ。
歌手陣も見事です。