夏から初秋にかけて、
まだまだ暑く、けだるい日が続きます。
そう、夏祭りや花火大会のにぎやかさとは別に、
静かでけだるい日々…というのも夏の日の特徴でしょうか。
蝉しぐれは割とうるさいですが。
店長は静かな音楽が好きで、
いろいろと紹介していますが、
暑さの中での静かなけだるさ…という言葉で、
スペインのモンポウという、
作曲家兼ピアニストのピアノ音楽を思い出しました。
モンポウの音楽との付き合いは比較的長く、
LP時代からですが、
例えばドイツ音楽を集中して聞くのとは異なり、
「思い出したときに聞く」ということが多いからか、
極める、ということはあまりありません。
ただ、
アリシア・デ・ラローチャや
日本の熊本マリが熱心に録音していたこともありますので、
その他の演奏者の録音を含めて、
CDショップでモンポウの名前を見ると、
いそいそとレジに持っていってしまいます。
モンポウのピアノ曲には小節線がないものが多いそうで、
カチっとまとまった音楽というより、
モンポウの心象に浮かんだ風景や感情の動きを、
そのまま音にした、ということが特徴です。
ただ、即興演奏を採譜したのかというと、
モンポウはかなり音の選び方には慎重だったようで、
推敲を重ねたのか、作品数自体はそれほど多くありません。
モンポウ自身、外交的な人ではなく、
ピアニストへの道をあきらめ、
作曲に専念するようになった内向的な人だったようです。
「音による詩」という言葉がぴったり来るかもしれません。
多少、軟体動物のような響きですが、
さらに軟体動物的なロシアのロスラヴェッツや、
4分音ピアノのヴィシネグラツキーとは根本的に異なります。
フランスのドビュッシーやサティの流れにある響きとでもいえましょうか。
静かな中にも、
スペインの乾いた日差しを感じることのできる、
聞く人によってはとびきりの楽曲ばかりです。
そのような内省的なモンポウな楽曲に、
幸いなことにモンポウ自身による録音が残されています。
スペインのensayoというレーベルが元ですが、
その全てをまとめて、
Brilliantという廉価盤レーベルから、
「モンポウピアノ曲全集」が出ています。
これはしょっちゅう聞くわけではありませんが、
何度でも聞きたくなる、宝物のような全集です。