ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」は、
ピアノ協奏曲では最後の作品ですが、
ベートーヴェンの生涯では中期の作品にあたります。
そのスケールの大きな第1楽章は「皇帝」という表題にふさわしく、
全体を聞いても実に素晴らしい作品です。
店長は一時「皇帝」に惚れ込み、
さまざまな演奏録音を漁りました。
初めて聞いたのは中学生か高校生の頃、
ジュリアス・カッチェンのピアノ、
ピエリーノ(ピエロ)・ガンバ指揮ロンドン交響楽団のレコードでした。
今思い出せば、
引き締まったよい演奏ではなかったかと記憶しています。
19歳の頃、上京していたときにコンサートでも「皇帝」を聞き
(確か、園田高弘さんのピアノだったと記憶しています)、
以来、今まで「皇帝」を聞いてきたことになります。
長じては特に第2楽章アダージョ・ウン・ポコ・モッソが大好きで、
交響曲第9番第3楽章とともに、
ベートーヴェンでは最も好きな楽章のひとつです。
バックハウスやケンプもよいですが、
最も「皇帝らしい皇帝」の演奏といえば、
意外ですが、グレン・グールドのピアノ、
レオポルト・ストコフスキー指揮のCBS盤です。
まさに、「皇帝」がなぜ「皇帝」なのか、
知らしめさせてくれる録音です。
その他、録音の凄さで驚いたのが、
ルドルフ・ゼルキンのピアノ、
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏録音でした。
故ジョン・マックルーアによる録音は、
LPでもCDでも、それは凄い音がしました。
当時の録音の鑑のような「皇帝」です。
ルドルフ・ゼルキンの優秀録音にはもうひとつ、
小澤征爾指揮ボストン交響楽団とのTelarc盤が残されています。
実はこのゼルキン=小澤盤の「皇帝」第2楽章が、
わがベストの演奏録音です。
Telarcはワンポイントステレオ録音で、
その優秀さが売り物でした。
エリック・カンゼル指揮のチャイコフスキー「大序曲1812年」は、
レコード時代、そのレコードの溝に、
自分のステレオのカートリッジがちゃんとトレースできるのか?
大砲の音でスピーカーを飛ばしてしまうのではないか?
という、凄まじいものでした。
オーディオに関心の高いクラシックファンのお宅でしたら、
たいがい1枚はあったように覚えています。
ゼルキン=小澤の「皇帝」も独特の録音で、
ボストン・シンフォニーホールの音もかくや、
と思える臨場感のあふれるものです。
少し包み込むような音場感がありますので、
その重めの感触の音に好悪が分かれるようですが、
店長はゼルキン=小澤盤の録音と演奏が大好きでした。
ゼルキン=小澤盤以降の「皇帝」もいろいろと聞きましたが、
他の演奏者の録音を聞きだすと、
なぜかゼルキン=小澤盤が懐かしくなってしまい、
また戻ってしまうのでした。
LPからCDに変わっても、いまだにゼルキン=小澤盤を聞き続けています。