人間、
生きている限りはそうそう楽しいことばかりではありません。
鬱状態に陥ることもあります。
店長の亡くなった妻は、
マタニティブルーが解消せず、
長い間鬱状態でした。
そんな妻が聞きたがったのが、
リチャード・クレイダーマンのピアノでのムード音楽でした。
その頃からイージーリスニングと言っていたのかな?
家でクレイダーマンのアルバムをしょっちゅうかけていましたが、
ある日、ひょんなことからアンドレ・ギャニオンを知りました。
CD屋さんでたまたま見かけたのです。
ムード音楽とかイージーリスニングはそれほど知っている方ではありませんので、
名前も知りませんでした。
それでも、「静かな生活」というアルバムタイトルに引かれ、
早速購入しました。
とりあえず買って帰り、
初めて妻と聞いていて、
なにかつかえが取れるような、
ほっとしたような感覚がありました。
テレビドラマの主題曲のようでもありますが、
重松清さんの小説を読んで、
慰めにも似たカタルシスを得た感覚、
といって良いかも知れません。
ひたすら優しく、そして物悲しく、静かな音楽が続きます。
鬱状態だった妻よりも、
むしろ、それを眺めていなければならない、
辛い自分自身に必要な音楽であったのかもしれません。
妻は亡くなってしまいましたが、
後年、自分自身も転機を経験しました。
これは非常に辛い時期で、
モーツァルトもベートーヴェンもワーグナーもブルックナーもマーラーも、
それまで自分が好きだった音楽をまったく受け付けない時期がありました。
現代音楽もよく聞いていましたので、
あるいは静謐なモートン・フェルドマンや、
日本の藤枝守なんてのは?と思って聞いてみるのですが、
これは残念ながら慰撫するような音楽ではありません。
何枚もアンドレ・ギャニオンのアルバムを購入、
結局、一番よく聞いていたのは
アンドレ・ギャニオンのアルバムだったと思い出します。
今はもう、
アンドレ・ギャニオンの音楽を聞くことは少なくなりましたが、
それでもたまに必要になるときがあります。
なお、画像は店長持っているものと若干異なりますが、
今はこのジャケットのものが少しは入手しやすいのかも知れません。