ブラームス/交響曲第2番は、
その冒頭、穏やかな田園詩のような音楽で始まります。
ブラームス自身、友人たちには
「第1番よりももっと重苦しい開始だ」と冗談で手紙に書いていたようですが、
実際には明るい陽光が降り注ぐような素敵な開始になりました。
ところが、そののどかさが続くのかと思うと、
演奏によっては全く異なる地平に、
足を踏み入れた音楽に変化してゆくことに気づかされます。
最初から最後までのどかな音楽ではないのです。
第2番の演奏録音というと、
古くはジョン・バルビローリとウィーン・フィルの演奏録音が思い出されます。
確か、ウィーン・フィルのステレオでのブラームス交響曲全集では
最初の録音だったでしょうか。
第2番も思い出深いです。
店長は、
第2番の録音では、
イギリスのエードリアン・ボールト盤と、
このバルビローリ盤でブラームスの聴取が育ったようなところがあります。
その他、地味な交響曲の割に、
ブルーノ・ワルター、ピエール・モントゥー、カール・シューリヒト、
そして、むろんカラヤンやザンデルリンク、ジュリーニとロス・フィル盤など、
愛聴してきた録音は数多いです。
さらに忘れてはいけない、ハンス・クナッパーツブッシュの数種のライヴ録音。
「お前の第2番の聞き方は間違っているのではないか?」
と教えられた録音群でもあります。
第2番を取り上げあげるなら、
上記指揮者の演奏録音どれでもいいのですが、
今回は思いっきりマニアックな変化球(^^)。
ヘルベルト・ケーゲルとライプツィヒ放送交響楽団との
1971年ライヴ録音です。
レーベルも、ODE CLASSICSという、
すでになくなってしまったようなレーベルで、
この録音は組み物に入っているために、
あまりにもマニアックすぎるかもしれません。
1971年の第2番以外、モノラル録音がほとんどです。
1971年の第2番は非常に生々しい音でステレオで収録されています。
しかも、第3番は収録されていませんので、交響曲全集ではありません。
店長はこの録音を久しぶりに聞いてみて、
非常に大きなショックを受けてしまいました。
まず、録音はライヴ録音特有の指揮者ノイズ、演奏者ノイズ、
そして聴衆ノイズがけっこう入りますが、そのリアルなこと!
隣の席に、当時東ドイツだったライプツィヒの
どこかのおじさんがいるかのような空気感です。
演奏の録音は、非常に生々しく、かつ透明感のある音で収録されています。
DRA放送用録音の、おそらくほとんど編集されていないか、
編集の跡を気付かせない程度の状態でのCD化のようです。
演奏は凄いです。
むろん、ライヴ録音特有の演奏のキズはありますが、
これだけ凄い演奏録音は、あまり聞くことができないのではないか、
というくらいの充実度です。
ブラームス/交響曲第2番って、こんなに切実な音楽だったのか!
と気づかされるような演奏が第1楽章、第2楽章と続き、
特に第2楽章の響きには胸が打たれます。
短い、息継ぎのような第3楽章の美しさ、
ファンタジー、エネルギッシュさは比類がありません。
冷たく輝く、陶器のような響きで、
「あれ?チャイコフスキーの『くるみ割り人形』だったっけ?」とも、
錯覚してしまいそうなほどです。
そして、第4楽章の解放感は素晴らしいものがあります。
演奏終了後の、長い長い拍手もかなり収録されています。
ケーゲルは、東西ドイツ統一後、謎のピストル自殺を遂げ、
その最期からも伝説化され、今でも日本にファンの多い指揮者です。
少し誤解されているような雰囲気もありますが、
非常に優れた指揮者であったことは間違いありません。
ケーゲルのブラームスは、
この第2番だけでも、どこかで復活させてほしいですね。