オルガン音楽…
というと、クリスマスに聞く特別音楽、
というイメージをお持ちの方も多いようですが、
店長は年がら年中オルガン音楽を聞いているようなところがあります。
古くはスペインのアントニオ・デ・カベソンから、
現代のメシアンあたりまで。
でも、やっぱり一番多いのは
ヨハン・セバスティアン・バッハのオルガン音楽で間違いがありません。
バッハのオルガン音楽というと、
「トッカータとフーガ ニ短調」の、
「チャラリー!」という出だしをすぐに思い浮かべますが、
「トッカータとフーガ ニ短調」はバッハが比較的若い頃の、
複雑で覇気に富んだ楽曲です。
凄い音楽ですが、
あまりにも凄すぎて、これは毎日聞きたいとは思いません。
オルガン音楽はオルガン用スコアにびっしりと音符が並んでいる…
という楽曲も少なくありませんが、
元来は即興演奏の楽器として発展してきた面があります。
キリスト教会でひとりオーケストラの自由度を増すために、
楽器そのものが建築物であり、
さまざまな音階、音色が出せるように発展しました。
教会における即興演奏は、
教会で歌われるコラール旋律にさまざまな厚みや装飾を施す、
ということが主流であったのかもしれません。
バッハには、
おそらくオルガンのために書かれたであろう、
トッカータとフーガやパッサカリアとフーガ、
トリオソナタなどの純粋器楽もありますが、
コラール旋律にさまざな厚みや装飾を加えたコラール前奏曲も数多くあります。
昔は衆讃前奏曲といいました。
バッハには、
息子のオルガン練習のために教会暦をもとに編曲したといわれる、
「オルガン小曲集(オルゲルビュヒライン)」という名編があります。
シュミーダー番号、BWV599からBWV644までの、
比較的演奏時間の短い音楽が集められています。
店長は、
この「オルガン小曲集(オルゲルビュヒライン)」と、
6曲のオルガンによるトリオソナタ集がことのほか好きで、
いろいろと漁盤しました。
その中で、昔も今も安心して聞いていられるのは、
ヘルムート・ヴァルヒャによる演奏録音です。
ヴァルヒャはモノラルとステレオで
新旧のバッハ・オルガン音楽全集を録音しています。
店長はステレオでの全集を中心に聞いてきました。
ヴァルヒャは盲目の演奏家で、
その全ての楽曲を暗譜していたそうです。
アフリカで医療に従事したアルベルト・シュヴァイツァーは、
聖職者、医療従事者であるとともに、
オルガン奏者であり、バッハの権威でもありました。
そのため、楽譜屋さんでバッハのオルガンスコアを買おうと思うと、
たいてい、シュヴァイツァー校訂のスコアでした。
シュヴァイツァー校訂のスコアを見ながら
ヴァルヒャの演奏を聞いているとよく分かるのですが、
オルガン音楽では当然のような演奏者による更なる装飾音を廃し、
ほぼスコアのまま、楽曲が再現されていることが分かります。
むろん、バッハのオルガン音楽は演奏者の自由に任されることが許容され、
さまざな録音を聞くと、
装飾がひじょうに豊富な演奏も数多くあります。
ヴァルヒャの原典的演奏はどこか質朴で、
厳格ですらあります。
でも、ひじょうに安心できるのです。
店長は夏でも冬でも、季節はあまり関係なく、
バッハのオルガン曲を聞いています。