モーリス・ラヴェルの「ボレロ」は、
1928年にバレエ音楽として作曲されました。
4分の3拍子の小太鼓の単調なリズムに、
2種類のメロディが楽器を変え、拡大しながら盛り上がって行きます。
単調な音楽かと思いきや、
オーケストレーションの名人であったラヴェルの手にかかると、
魔術的ともいえる色彩感が豊かな、
とてつもなく楽しい楽曲になっています。
「ボレロ」は、
中学生の頃から、
レコード、コンサートを問わず数多く接してきました。
各楽器のソロがいっぱい出てきますので、
オーケストラの楽員には腕の見せ所であると同時に、
失敗すると目立ってしまう、
恐ろしい楽曲でもあります。
なんど、「ボレロ」ではなく「ボロボロ」になった同曲を聞いたことか…。
初めて聞いた「ボレロ」は、
エルネスト・アンセルメ指揮か、
シャルル・ミュンシュ指揮のレコードです。
そのエキゾチックなメロディが一発で気に入り、
クラシックを聞き始めの頃はお気に入りの楽曲でした。
長じてからも、
クライディオ・アバド盤やシャルル・デュトワ盤など、
なんとはなく聞いてしまっている楽曲でもあります。
ラヴェルには歴史的録音として、
自身の指揮した録音も残っています。
ラヴェル自身の指揮は比較的テンポがゆっくりしたもので、
今ほど、オーケストラの名人芸に寄りかかったという印象はありませんでした。
ラヴェルは16分から17分程度の演奏時間を考えていたようです。
ただ、アメリカのオーケストラでは、
その名人芸を誇示するため、
早いテンポが流行ったことがありました。
少し早めの13分台とかからいろいろありますが、
遅くてびっくりしたのが、
セルジュ・チェリビダッケの録音でした。
最初聞いたのは放送用録音で18分台でしたが、
遅くても、恐ろしく説得力のある演奏録音でした。
EMIからリリースされた、
「展覧会の絵」とカップリングされた「ボレロ」も、
18分台の遅い演奏です。
ラヴェルを聞くというより、
チェリビダッケの独特の哲学と個性を聞いているような演奏録音ですが、
これはなかなか素晴らしいです。
「ボレロ」という、
いわば聞き古された楽曲から、
なにやら深遠な何かを聞かせてもらっているようでもあります。